夏休み百物語 ~一分半で読めるみんなのこわいはなし~
アハハのおばけちゃん
第1話 夏休み百物語(7/19)
※
「……以上のことを、休みのあいだ注意して過ごして下さい。みなさん、身体に気を付けて、中学二年生の夏休みを過ごして下さい。そして、このクラスだけの課題を出します」
担任が言ったことに、「ええっ」と、教室のあちこちから声が上がり。
私は、みんな浮かれていて、いいなと思う。
明日から、学校がないのがゆううつで仕方ない。
「自由研究の代わりになりますから、問題はないかと思います。課題は、ひとりひとつ、こわい話を書いて提出して下さい。みなさんで、夏休み百物語を完成させて下さい」
担任が言ったことに、「どういうこと」と、教室のあちこちから声が上がり。
私は、くだらないことでさわげて、いいなと思う。
明日から、どうやってごはんを食べればいいのだろう。
「このクラスの人数は三十人ですが。安心して下さい、七十の物語は去年までに集まっています」
担任が言ったことに、ざわざわと声が上がり。お腹の音が消され、ほっとした。
この一週間、朝と夜にごはんを食べられていない。今日は昼までで給食がない。
ひとは何日食べないでいられるのだろうと思ったとき。担任に名前を呼ばれた。
「物語の管理を、夏休み中お願いします。毎日学校に来てもらうことになるので、明日からの心配はなくなりますよ」
私は、とても驚き、どうしてと思った。
一週間ほど母親が帰ってこず、置いていったお金がつきていること。誰かに、担任にも言っていない。
事情を話せば、施設につれもどされるからだ。
「みなさんが、こわいと思うことはなんですか。私は、人間がこわいと思います。自分と同じような姿かたちをしていても、同じことを考えていることはありません。同じ言葉を使っているのに、分かり合えることはありません。こわいとは、よく分からないことだと思います。みなさんが、こわいと思った話を書いて下さい。実際にあった話でも作り話でもかまいません、夏休み百物語を完成させて下さい」
担任が言ったことに、「どういうこと」と、教室のあちこちから声が上がり。
私は、担任がこわいと思った。
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