「歩幅をそろえて」

蒼影学園の朝はいつも通り、静かな活気に満ちていた。透き通る青空の下、生徒たちが校門をくぐり、笑顔や声が校舎に響く。


主人公のインクは教室の窓際に座り、静かにノートを開いていた。彼の隣にはいつものようにミリアムがいて、どこかぎこちないけれど、確かな距離感がふたりの間にあった。


「先輩、今日は…なんだかいつもより緊張してますね」

ミリアムが小さな声で話しかける。


インクは少しだけ微笑み、視線を彼女に向けた。

「そうか? 俺もそうかもしれないな。付き合い始めてから、色んなことが変わった気がする」


ミリアムは頷き、カバンから小さなメモ帳を取り出した。

「歩幅をそろえるって…難しいですね。自分の気持ちを言葉にするのも、先輩のことを理解するのも」


インクは静かに答えた。

「焦らなくていい。俺たちは俺たちのペースでやればいいんだ」


授業が進む中、ふたりの間には静かな空気が流れた。

昼休みには、他のクラスメイトたちも彼らの様子に気づき始め、ささやかな反応が広がっていた。


午後の授業後、部活の時間。インクはバドミントン部の部室で、後輩たちと笑い合いながら過ごしていた。ミリアムは隣の教室で友達と話しているが、時折ふたりを気にする視線を送っていた。


放課後、ふたりは一緒に帰る約束をしていた。

校庭を歩きながら、インクはぽつりと言った。

「互いの歩幅を合わせるって、ただ一緒に歩くことじゃないんだな」


ミリアムは少し考え、口を開く。

「言葉にしないと伝わらないことも多いけど、無理に急ぐ必要はないよね」


夕暮れが二人を包み込む。校舎の影が長く伸び、風がそっと吹き抜けた。


「先輩、これからも…よろしくお願いします」

ミリアムの声は真剣で、けれど柔らかかった。


「ああ、俺もだ」

インクは彼女の手をそっと握り、二人の距離は確かに縮まっていった。


次回予告「学園の日常に戻って」

ゆったりと流れる学園の時間。

恋人同士になった先輩と後輩は、まだぎこちないながらも、少しずつ日常に溶け込んでいく。

クラスメイトの何気ない会話や、放課後の笑い声が、ふたりの心を温かく包む。


「デートの約束や、部活の話題、そして小さな事件もあるかもしれない」

新たな季節の始まりとともに、二人の物語はまだまだ続く。


次回は、少しずつ歩幅を合わせていくふたりの穏やかな日常を描きます。


どうぞお楽しみに。

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