見せかけの誠意

 

第1話

男1「あちー、髪がべとべとする」


男2「切ればいいじゃん。それに、お前なんで男なのに90年代のキムタクぐらい髪の毛伸ばしてるの? 気持ち悪い」


男1「お前の左手よりは気持ち悪くないわ」


男2「髪を伸ばしたって顔のパーツが変わんなきゃ女にはモテないぞ」


男1「俺はそんな理由で髪を伸ばしてるのわけじゃない。これは、他人に誠意を見せるためだ」


男2「は? 誠意?」


男1「俺がもし他人に何かしでかしても普通に謝ったら許してくれないかもしれない。でも頭を丸めたら、誠意がこもってるように見えるだろ? それにキムタクぐらい髪が長ければ、俺がまるでそれを大事にしてるように他人に思わせることができる。それを手放してまで謝る。これこそが見せかけの誠意なんだよ」


男2「へー、要するにお前にとって髪の毛はとかげの尻尾と同じってわけか」


男1「そゆこと。でも、お前は怖くないのかよ? 誠意見せろって言われた時どうすんの?」


男2「ふふふ。こんな時のために、俺は6本目の指は切らずにそのままにしてんだよ」


男1「でもそれだと勘のいい人なら、『こいつ実は何も犠牲を払ってなくないか?』って思われない? だって、普通の人って手の指5本だよ」


男2「そっか。……やっぱり、俺も髪伸ばそうかな」

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見せかけの誠意   @hanashiro_himeka

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