ごめんなさいを伝えに

―主人公の自宅―


ピンポーン


「・・もう1回だけ・・」


ピンポーン・・・・ガチャ


「あ!・・こんにちは・・」


「帰ってくれ。」


「待って!お願い!!少しの時間でいい、あなたと話をさせて欲しいの。」


「・・・散らかってるよ。」


「ありがとう・・」


パタン・・


「お邪魔・・します。」


「適当に座って。お茶しか出せないけど。」


「ありがとう。私にお構いなく・・」


「なんの用?」


「急に来た事といい・・学園祭の事といい・・私・・あなたにどうやって謝ったらいいのか・・本当にごめんなさい!」


「謝るよりも事情を説明してくれない?」


「そうだね。どっから話せば・・予めメッセージなりすれば良かったんだけど、あの時・・怒り任せにあなたの連絡先を削除してしまって・・あなたへの連絡手段が無かったの。だからあなたからしたら連絡もなく急に来た感じになるよね。」


「なんで俺の家知ってるの?」


「住所は・・あなたの担任の先生に頼み込んで教えて貰ったの。最初は個人情報を盾に教えて貰えなかったけど、先生に土下座して、ずっと額を床につけてお願いし続けて・・」


「そこまでして・・」


「当然、周りの先生も黙って無かったよ。だけど・・そこまで言うなら事情を全て説明する・大学の推薦は無しって条件で教えて貰ったの。」


「・・そう・・」


「だからあなたの担任の先生、今日ここに私が来る事は知ってるよ。多分、停学明けの時には今日の事は聞かれると思う。」


「俺はどうでも良いけど・・推薦捨ててまで来なくても良かったのに。」


「私の推薦の事は気にしないで。先生も推薦取り消しを出せば諦める思ったみたいだけど・・言った以上は引っ込みつかなくなったみたい。だけど、私は後悔してないから。」


「君に悪いことしたね。」


「あなたには迷惑な話かも知れない、けど・・どうしても早く直接謝りたくて。」


「平手打ちの事?」


「あなたが学園祭の時、あの人を何故殴ったのか。その原因を知ったから。」


「誰から聞いたの?」


「あの人の近くにたまたま私の友達がいて・・あの人、私の事を心底馬鹿にして笑い物にして、気持ちを踏みにじった事を教えてくれたの。」


「・・そう。」


「私は逃げ出したから聞こえなかったけど、あなたは聞こえたんだね・・あの人が何を言ったか。」


「聞いたよ。」


「私からしたら・・未練が残ってる人が訳も分からずに殴られてたから驚いたよ。」


「それは仕方ないよ。」


「けど・・あの人・・あれだけの人がいた中で色々と言っちゃったんだね、私が告白した時の事。」


「聞きたく無かったけどね。」


「それに対してあなたが私への謝罪を要求したけど・・反対に聞くには耐えない事を言い出して・・私の代わりにあの人を殴り飛ばしたんだね・・」


「許せたもんじゃ無かったから。」


「そんなあなたを・・」


「気にしなくていいから。」


「いい事ないよ!私の為にそこまでしてくれたのに・・何も知らなくて・・先生からの事情聴取の時も、私の事は一切口にしなかったんだね。」


「あくまでも俺の問題、巻き込めないからね。」


「・・私が告白した時も・・ダメならごめんなさいの一言で良かった。けどあの人、私の告白を聞いてから大笑いして・・散々馬鹿にしてきたんだ。それでその場にいるのが辛くなって・・走ってあの場から逃げ出してる時、あなたにぶつかったの。」


「そう・・」


「あの時からあなたが傍にいてくれたからこそ、笑えて前向きになれて・・少しづつあの傷が癒えていたのに・・私のせいで・・1ヶ月も停学・・に・・なって・・どうやって謝ったら良いのか・・」


「向こうの落ち度も考慮されて、ギリギリで退学は免れたけどね。」


「あなたが退学なら私も辞めてたよ、学校・・あなたがいないなら、私の居場所なんてないよ。」


「全ては俺の責任。君が辞める必要はないよ。」


「・・・・」


「どうしたの?」


「話が急に変わっちゃうけど・・・今日、ね・・私・・家に帰らなくて良いの。」


「は?」

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