訪れなかった未来 米閲覧注意
第45話:エピローグ(前編)
「ティニヤ・シエヴィネンは、王太子妃になれなかった事を逆恨みし、昨夜王宮へと忍び込んだ! メディ・ヤルヴィサロ王太子妃殿下を殺害しようとしたところを拘束され、早朝に毒杯を賜わることになった!」
朝早く、長らく行方不明とされていたティニヤ・シエヴィネン公爵令嬢が処刑された事が発表された。
その発表を素直に信じる者など誰も居なかった。
今代の王太子ヤルノは、王太子妃教育が終わっていたティニヤを捨て、メディを王太子妃として迎えていた。
それは本来ならば有り得ない事だった。
ティニヤは密かに王家に殺害されたのでは、と噂が流れた。『殺害』が『監禁』に変わるのは、最初の噂が流れてすぐの事だった。
可愛らしさと愛嬌だけが飛び抜けていた王太子妃が、なんの支障も無く執務をこなしていれば当然だろう。
凛とした雰囲気のティニヤとは違い、メディは見た目も言動も幼い少女がそのまま成長したかのようだった。
ヤルノがメディを選んだのは、自分を褒め讃え持ち上げる、承認欲求を満足させてくれるから。その一点だけだった。
妖艶なティニヤと幼児体型なメディ。
ティニヤが側妃になれるのならば、ヤルノは間違いなく召し上げていただろう。
ただ、法律がそれを許さなかっただけで。
王子が生まれてティニヤが処刑され、一ヶ月が過ぎた。
それなりに体型の戻ったメディが、ヤルノの前で服を脱いだ。
「ジャーン! おっぱいが大きくなりました!」
ベッドに座るヤルノの前で大股を開いて立ち両手を広げている様は、一国の王太子妃がやって良い行動ではない。
昔は可愛く見えた幼い子のような行動も、母親となった妻がやれば単なる馬鹿である。
「メディ、
臣下から、ティニヤがいなくなってから政務が滞っている、と責められた鬱憤もあり、ヤルノはメディに怒りをぶつける。
ヤルノの知らぬところで、予想以上にティニヤは国を動かしていた。
まさかメディの執務だけでなく、自分の執務まで行っていたとは、ヤルノ自身が知らなかったのだ。
知っていたら、ティニヤに毒杯など渡さなかっただろう。
三代前のアルマス国王の時代に、国が割れるような事件があった。
そのせいで、優秀過ぎる側妃は国を乱す、との理由で王太子妃教育が終わった者は側妃に出来ないという、なんとも変な法律が出来ていた。
アルマス国王は、愚王として既に歴史に名を残している。
その事件の印象が強かったのだろう。
ヤルノは、王太子妃教育が終わっているティニヤに毒杯を渡した。
自分の代で国が荒れては困ると。
生殺与奪の権を握っている事に酔っていたのかもしれない。
後継者が生まれた事による興奮も有り、ほぼ勢いでティニヤを処刑していた。
山に積まれた書類を前に、ヤルノは辟易していた。
「これは本当にティニヤがしていたのか?」
声を潜めて書類を持って来た男に問うと、男は冷めた目を向けてくる。
「これでも全部ではありません。我々の方で内々に処理しているものも有りますので」
本当は違法なのですけどね、と男は声を潜める。
ティニヤの存在が隠されているのをいい事に、そちらに回した振りで横領していた者もいた為、泥を被る存在が必要だったのだろう。勿論、ヤルノは気付いていない。
現在の国王と王妃は可もなく不可もなく、事なかれ主義だった。
後継者の教育や
アルマスやサンナ王妃の子である前王は、とても冷徹で王らしい人だった。
それが悪い方へ影響したのだろう。
「後継者も生まれた事だし、私達は隠居してのんびり暮らすよ」
国王が突然、議会の席で宣言をした。
元々国政にあまり関わっていなかったので、あれよあれよという間にヤルノが国王へと繰り上がる。
国王というその名前と地位に酔い、何も考えずにヤルノは戴冠式を済ませた。
それから数年。
国は大荒れに荒れていた。
王宮内の不正や横領は当たり前になり、国庫は空に近い。
国民、特に平民からの不満が爆発寸前だった。
そこに下位貴族が加わり、更に良心的な上位貴族まで参戦し、ヤルノは合法的に暗殺される事となった。
おかしな話だが、国庫から依頼費用が出されたのだから、そうとしか言えない。
ヤルノが暗殺され、幼い王子が国王になり、使えない臣下は軒並み辞任へ追い込まれた。
アルマス以上の愚王と認定されたヤルノは、王家の墓ではなく、罪人などが放り込まれる墓地にある墓穴へと放り込まれた。
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すみません。長くなったので分けます。
エピローグが前後編って……(-_-;)
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