【完結】寝取られ動画でガッツポーズした俺、壊れかけた清楚な本命を純愛で救うと決めた――演技のデートのつもりだったのに、いつの間にかラブコメ始まってたんだが?
第32話 また“声、返しちゃうかも”とか、反則すぎない?――そして、尾行の果てに、あいつと先生の会話を覗くことに
第32話 また“声、返しちゃうかも”とか、反則すぎない?――そして、尾行の果てに、あいつと先生の会話を覗くことに
修学旅行三泊四日。二日目の午後。
午前の班行動が終わり、旅館に戻ってきたところで、耳が勝手に反応した。
「え、月森? マジで?」
「倒れかけたって……大丈夫なんかな」
はい、即ロックオン。
その名前を聞いた瞬間、全身の血が逆流した気がした。
――倒れかけたって、どういうことだ。
朝、神崎と一緒にいた詩乃の姿を遠目に見たけど、たしかにどこか元気がなかった。
神崎といるせいかと思ったけど、あれは気のせいじゃなかったってことかよ。
胸騒ぎが止まらない。
気づけば、雪村先生を探してダッシュしていた。
裏手の廊下で先生を見つけて、息を切らしながら声をかける。
「先生っ!」
わりと全力だったせいか、先生はちょっとびっくりした顔で振り返った。
「ど、どうしたんだ篠宮。何かあった?」
「月森さんが……倒れたって、ほんとですか!?」
一瞬、先生は俺の顔を見て――小さくため息をついた。
「……実は、午前の見学中に軽い貧血で、今は一人で女子部屋で休んでるよ。
昨日の調子がまだ良くなってなかったみたい。
でも、そこまで重くはないから安心して」
「よかった……」
本気でほっとした。
「先生、お願いがあります。ちょっとでいいんで、
月森さんに会わせてくれませんか」
すがるように頼む俺に、先生はちょっと困ったように目を細めた。
「気持ちはわかるけど、立ち入り禁止なんだ……。
旅館の規則でもあるし」
「そこをなんとか……!
あ、いや、別に女子部屋荒らしに行くわけじゃないです!
ただ、見舞いを……こう、そっと部屋の隅っこに正座して、息ひそめて、
空気清浄機みたいな存在になって見守るだけなんで……!」
「なにそれ、逆に怖いんだけど」
雪村先生は苦笑してから、小さく肩をすくめた。
「でも……篠宮って、本当に月森のこと、大事に思ってるんだね」
先生は一瞬だけ周囲を見て、それからふっと小さく微笑んだ。
「――少しだけ。ほんの少しだけなら、いいよ。
今は月森しか部屋にいないしね。
“これは秘密”。ね?」
そう言って、軽くウィンクをくれた。
「ありがとうございます……!
マジで一生ついていきます……!」
「それは遠慮するよ」
なんだかんだ言いながらも、先生の表情はちょっと優しかった。
◇ ◇ ◇
畳の匂いと、昼下がりの静けさが、旅館の和室に満ちていた。
引き戸の前で、俺は一回深呼吸する。
そしてスリッパを脱ぎ、音を立てないように、そろりと襖を開けた。
そこには、薄い布団にくるまって、少しだけ身を起こした詩乃の姿があった。
乱れた銀髪が頬にかかっていて、普段よりも線が細く見える。
「……っ。来てくれたんですね」
その声は、聞き慣れたものより少し掠れていたけど――
俺の胸の奥に、ちゃんと届いた。
「うん。……来た」
俺は静かに引き戸を閉めて、畳に正座する。
なぜか、この部屋の空気に背筋がしゃんとする。
――昨夜のふすま越しの声が、嘘みたいに近い。
「見舞いっていうか……俺が、顔見たかっただけかもな」
そう言うと、詩乃はふわりと笑って、布団に指を添えた。
「ふふ……来てくれて、嬉しいです」
そう言ったあと、詩乃はふと視線を落として――小さく呟いた。
「……こんな時間、許されるのかな」
その一言に、胸の奥がきゅっとなる。
「……いいんだよ。俺が許す」
冗談みたいに返したつもりだったのに、思った以上に本気の声になってた。
詩乃は一瞬だけ、言葉を飲み込んで――小さく、吐息をもらした。
彼女は続けて言った。
「……朝、ちょっと無理しちゃったみたいで。
神崎さんにも、“もういい”って言われて……
でも、ひとりになるのって、ちょっと怖くて」
その小さな声が、畳に落ちて、じんわり心に染みてくる。
……“もういい”って、そういう言葉を“捨てる”ために使うのかよ
「俺はさ。逆に、“来いよ”って言われたかったな」
「え?」
「“直哉さん、来てください”って。
そしたら俺、観光地から新幹線ばりの勢いで戻ってきたのに」
そう言うと、詩乃は目を見開いて――次の瞬間、布団に顔を半分埋めた。
「……っ、そういうことを、平然と言うの、ほんとにずるいです」
「いや、全然平然じゃねーし。むしろ今、口の中カラッカラだからな」
冗談まじりに笑うと、詩乃も『ふふっ』と喉を鳴らして笑った。
……ああ、やっぱりこの声、落ち着く。
「てか、詩乃さ……もうちょっと俺を頼ってくれよ」
「頼ってるつもり……なんですけど」
「じゃあもう、詩乃ポイントカードとか作ってくれ。
俺、全部スタンプ押すから」
「なにそれ……変な制度、作らないでください」
「10ポイントで肩たたき券な。20ポイントで耳かきな」
「小学生かな……?」
詩乃はふにゃっと笑って、ほんの少しだけ布団のなかで体を丸めた。
その表情は、さっきよりほんの少しだけ柔らかい。
ひとりで寝てた時間より、ちょっとだけ楽になってたら、
それだけで、来てよかったって思える。
「……あのさ」
「はい?」
「俺さ、京都のお土産、なにがいいかなってずっと考えてたんだけど――
今わかった。詩乃が笑ってる時間、これだな」
「……っ、そんなの、ずるいですってば」
また顔を隠す詩乃に、俺もつられて少し照れ笑いする。
ほんと、自分でもどうかと思う。
この空気で、告白一歩手前みたいな台詞ぶっこむとか、どこのドラマだよ俺。
でも、ただ、目の前にいる彼女を笑わせたい。それだけだった。
……名残惜しいけど、長居して体調ぶり返されても困るし、雪村先生とも少しの間だと約束した。
そろそろ引くか。
「じゃあ、また夜にでも……って言いたいけど」
「……ちゃんと寝ろ、ですよね?」
「正解。女子部屋の看板娘が夜更かししてたら、俺も安心して眠れないしな」
「でも……もしまた夜、声が聞こえたら」
詩乃は、少しだけ視線を下げながら、囁くように続けた。
「……声、返しちゃうかもしれません」
その言葉に――不覚にも、俺は一瞬、言葉を失った。
……やめてくれ。
今の俺、人生で一番ふすまに土下座して、夜、開けてくれと頼みそうになったから。
「……それ、反則なやつだな」
「……ごめんなさい」
「いや、謝らないでくれ。何度でも言ってほしい」
「……もうっ」
頬を赤く染める詩乃に、俺はそっと立ち上がって、静かにふすまに手をかけた。
「おやすみ、詩乃」
引き戸を閉めようとしたその瞬間――
「……また明日」
その声が、小さく、けれど確かに届いた。
……ふすま一枚越しの距離なのに、
なんでこんなに、心の中が近く感じるんだろうな。
◇ ◇ ◇
修学旅行三泊四日。三日目の朝。
今日は訳あって早めに起きた。
他の男子たちは半数以上まだ寝ている。
俺はこっそりと部屋を抜け出した。
早めに起きた理由は、神崎の手がかりをやっと手に入れたからだ。
昨日、詩乃と別れてから、
彼女が体調を崩している中、観光する気分にはなれなかった。
そんな気分でさらに、タイムリミットが迫ってる中、何も出来ない時間が怖くなった。
そして、桐山たちに無理を言って別れて、いつものように、神崎の取り巻きの尾行を開始した。
変装道具は一応持ってきていた。
修学旅行にバッグに隠し入れてる時点で色々終わってるな俺。
そして、観光中の取り巻きを尾行していたら、こんな話を聞けた。
端的にまとめると、
“ある教師に神崎が呼び出されて話し合う事になったらしい“、
“何度も話したのに、修学旅行中にも呼び出され神崎はうんざりしている“、そう話しているのを聞いた。
そして、その時間は誰にも目がつかない様に今日の朝食前だとも言っていた。
二週間尾行して、ようやく僅かな手がかりが得られた。
場所や正確な時刻までは聞けなかったので、俺は廊下に出て、いくつかの部屋の近くを回った。
すると、奥の空き部屋から、声が微かに漏れ聞こえてきた。
『――月森の様子が、ずっとおかしいんだ。
本当に心当たりはない?』
――これは……雪村先生の声?
え、これって、もしかして……?
興味と不安がごちゃ混ぜになった俺は、音を立てないようにそっと歩を進める。
部屋の戸をほんの少しだけ開けて中を覗く。
部屋の中には――神崎と雪村先生が向かい合って座っていた。
―――――――――――――――
※お読みいただき、ありがとうございました。
修学旅行編も前半が終了し、次回から後半戦です。
直哉と詩乃の2人きりのやり取りに少しでも感じるものがあったり、
神崎と雪村先生の対話が気になる方は、是非、☆評価や感想をいただけると、とても励みになります。
☆評価は目次から付けられます↓
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