合わせ鏡のノッペラボウ カクヨムver

赤澤月光

第1話

美人アイドル、桜井美咲はその完璧なルックスと才能で多くのファンを魅了していた。


ある日、彼女は新曲のジャケット撮影のため、古い洋館を借りることになる。


その洋館は不思議な雰囲気を醸し出しており、特に長い廊下の奥にある大きな鏡が印象的。


その撮影の合間、美咲は好奇心に駆られて、その鏡の前に立つ。


ふと気がつくと、鏡の中に映る自分の顔から目や鼻、口が消えている。


そして次の瞬間、美咲はそののっぺらぼうと身体が入れ替わってしまったのだった。、


鏡の外に立つのっぺらぼうの姿は、まさに“美咲”その者だが、心は鏡の中に囚われたまま。


美咲は声を上げようとするが、鏡の中から、声は届かない。


とても不安で一杯になるが、ふと感じた鏡越しの懐かしいぬくもり、それはかつての自分自身の温かさだった。


鏡の中での時間が経つにつれ、美咲は自分を見失いそうになったが、仲間やファンのことを思い出し、どうしても外に戻らなくてはならないと決意するも。


鏡の外では、のっぺらぼうの“美咲”が撮影を続けていたが、その違和感にマネージャーやスタッフが気づき始めた様子。


そんな中、美咲は隣の古い棚に置かれていた古びた鏡の破片を発見。


その破片を使って、鏡の外にいるのっぺらぼうに「真実の姿を映す」と心を込めた。


すると、のっぺらぼうも直感的にその意味を理解し、鏡に向かって微笑みを返す。


その瞬間、二人は光に包まれ、元の位置に戻った。


美咲は再び自分の顔を取り戻し、鏡の外に立つ。


安堵の涙が頬を伝う美咲は、今回の出来事を誰にも告げずに心にしまうことに。


撮影を終えて帰る前に、桜井美咲は最後にもう一度その鏡を見る。


鏡の中には普通の自分が映っていたが、その奥にはほんの少し微笑んでいるのっぺらぼうがいるような気が。


それ以来、美咲はどれほど美しい外見が重要であっても、内側の心の美しさこそが本当の自分であることを感じるようになった。


その信念は彼女の活動にも新たな深みを与えた。全ての体験を無駄にしなかった。


# 鏡の向こうの私 - 美咲の異次元体験


輝くスポットライトの下、完璧な笑顔を浮かべる桜井美咲。彼女は日本のエンターテイメント界で最も輝く存在だった。整った顔立ち、澄んだ歌声、そして洗練された振る舞い—すべてが完璧だった。しかし、その完璧さの裏には、常に自分自身への疑問が隠れていた。


「美咲ちゃん、次の撮影場所はちょっと変わってるけど、コンセプトにぴったりだから」


マネージャーの言葉に、美咲は軽くうなずいた。新曲「パラレルハート」のジャケット撮影のため、郊外の古い洋館を訪れることになったのだ。


洋館に到着した瞬間、美咲は不思議な感覚に包まれた。まるで時間が歪んでいるような、現実とは少しずれた空間に足を踏み入れたような感覚。建物全体が微かに脈動しているようにも感じられた。


「ここ、何か変わってる...」と美咲が呟くと、カメラマンは笑って答えた。

「そう?でも雰囲気あるよね。特にあの廊下の奥の鏡、撮影に使えそうだよ」


撮影は順調に進んだ。しかし休憩時間、美咲は好奇心に駆られ、誰もいない廊下の奥へと足を運んだ。そこには古びた金縁の大きな鏡が壁にかけられていた。


鏡に近づくと、表面が微かに波打っているように見えた。まるで液体のような...いや、それは錯覚だろうか。美咲は自分の姿を確かめようと鏡の前に立った。


最初は何も変わらなかった。しかし、じっと見つめていると、鏡の中の自分の顔から、ゆっくりと目が消えていった。次に鼻、そして口も。


「え...?」


恐怖で声を上げる間もなく、美咲は強い引力を感じた。まるで鏡に吸い込まれるような感覚。そして次の瞬間、彼女は鏡の中にいた。


鏡の外には、彼女そっくりの姿をした存在が立っていた。しかし、その顔には目も鼻も口もない—のっぺらぼうだった。


「助けて!誰か!」美咲は叫んだが、声は鏡の外へ届かなかった。


のっぺらぼうは、まるで美咲の動きを模倣するかのように頭を傾げ、そして踵を返して撮影現場へと戻っていった。


鏡の中の美咲は、パニックに陥った。彼女は鏡の表面を叩き、叫び続けたが、何の反応もなかった。やがて疲れ果て、彼女はその場に座り込んだ。


「どうして...こんなことに...」


そのとき、不思議な温かさが彼女を包み込んだ。それは懐かしい感覚だった。子供の頃、母に抱きしめられたときのような、純粋な愛情の感覚。


美咲は気づいた。それは彼女自身の心の温かさだった。アイドルとしての仮面の下に隠れていた、本当の自分の温もり。


鏡の外では、のっぺらぼうの「美咲」が撮影を続けていた。しかし、その動きはどこか機械的で、笑顔も空虚だった。


「美咲ちゃん、調子悪い?」マネージャーが心配そうに尋ねた。

「...大丈夫」のっぺらぼうは、美咲の声を模倣して答えた。


時間が経つにつれ、スタッフたちは「美咲」の違和感に気づき始めた。彼女の目に光がなく、言葉に感情が込められていなかった。


一方、鏡の中の美咲は、自分を取り戻す方法を必死で考えていた。そのとき、鏡の横にある古い棚に、小さな手鏡の破片が置かれているのに気づいた。


「これは...」


美咲は直感的にその破片を手に取った。それは不思議な光を放っていた。彼女は破片を通して、鏡の外ののっぺらぼうを見た。


「私は...ここにいる。これが本当の私」


彼女は全身全霊をこめて、その思いを破片に込めた。すると、のっぺらぼうも何かを感じたように、鏡の前に戻ってきた。


二つの存在が鏡を挟んで向かい合ったとき、不思議な共鳴が起こった。のっぺらぼうは、まるで理解したかのように、鏡に向かって微笑んだ—顔に表情がないにもかかわらず、その意図は明確に伝わってきた。


突然、まばゆい光が鏡を包み込み、美咲は強い引力を感じた。目を開けると、彼女は再び鏡の前に立っていた。自分の顔、自分の体を取り戻していた。


安堵の涙が頬を伝う。美咲は深く息を吸い込み、自分の存在を確かめるように両手で顔を触った。


「美咲ちゃん、そこにいたの?次のショットの準備ができたよ」カメラマンの声が廊下に響いた。


「はい、今行きます」


美咲は最後にもう一度鏡を見た。そこには普通の自分の姿が映っていた。しかし、よく見ると、その奥に微かな笑顔を浮かべるのっぺらぼうの姿が見えるような気がした。


撮影を終え、洋館を後にする美咲。彼女は今回の出来事を誰にも話さなかった。しかし、その体験は彼女の心に深く刻まれた。


それからの美咲は、以前とは違っていた。彼女の歌には新たな深みが生まれ、ファンとの交流にも真摯さが増した。外見の美しさだけでなく、内面の輝きを大切にするようになったのだ。


「美しさとは何か」—その問いへの答えを、彼女は鏡の向こうで見つけたのかもしれない。


そして時々、彼女は一人きりのとき、鏡に向かって微笑みかける。まるで、あの日出会った不思議な存在に、感謝の気持ちを伝えるように。




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