第2話 ミサキ、新曲書く

《新曲》


いつものラーメン屋、いつものちゃぶ台。

今日はミサキが新曲のアイディアを持って来た。


———タイトルは

①「THIS IS 最高」

②「ガリガリ君はソーダ味に限る」

③「辛いなんて言うなよ、これカレーなんだから」


「うっ、さすがミサキネキ。ぶっ飛んでるな。」

カナメが真顔で歌詞を読み込んでいる。

そして、ぽつり。


「……“ガリガリ君の棒をマイクにして歌い出した少年時代”って、これAメロか?」


「そうそう!夢のはじまりって感じでしょ?」

ミサキがドヤ顔でラーメンをすすりながら言う。「サビは“当たり棒で未来が変わった”!」


「“辛いなんて言うなよ、これカレーなんだから”はシタール入れて行くよ!ユウジはターバンね。」

「マジで!?」

ユウジが器を持ったまま固まってる。


「ていうか……カレーの歌って何歌うの?」

「“君が泣いた日、スパイスが沁みた”とか」


ミサキさん、この「THIS IS 最高」って、どんな内容なの?

「あ、それ?サーフィン・ソング!」


カナメは歌詞カードをめくる。

“俺のハートは、620hPa(ヘクトパスカル)!波に乗れれば、THIS IS サイコー!”


スゲーな、ネキ‥‥‥‥。。


ちなみに、ミサキ愛用のギターは、リッケンバッカー620。バイトで貯めた19万で、お茶の水の上倉楽器で購入した愛器だ。


カナメがゆっくりラーメンをすすりながら、真顔で言う。

「ミサキさん……この3曲で、アルバム作るつもりですね」


「うん。“青春ガリ・カレ三部作”。」

「略して?」

「“ガリカレ”。」

「学食のメニューかよ」


ちゃぶ台の上には、ラーメンとメモ帳と無限のアイディア。

それを前に、誰も笑うのをやめられない。

ミサキネキ、今日も飛ばしてる。

このままガリガリ行こうか、カレーのように熱く行こうか。


…というわけで、来週のスタジオ、3曲分入ります。

たぶん全員、腹筋と涙腺が持たない。

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