異世界ダンジョンで飯と女を手に入れる方法
仙人掌
第1話 異世界求人
「ようするに、クビってことですか?」
そう口にした瞬間、自分の声が思っていた以上に軽かったことに驚いた。
いや、驚いてる場合じゃない。辞令が出たのは今朝で、引継ぎすらさせてもらえずに“お疲れ様でした”と荷物を渡された。7年間、月残業90時間。休出も多かった。社内の誰よりも長く働いていた自信がある。
けれど今、自分の手元には――中古のスマホと、500円玉が1枚だけ。
「……死にたいって思う人間って、たぶん、こういう時に思うんだな」
とぼとぼと歩いた先は、なぜか小さな公園だった。遊具は古く、ベンチは錆びついている。
座ってスマホを見た。「転職」「副業」「田舎移住」……なんでもいい、現実逃避したかった。
そのとき――目に止まった、ひとつのバナー広告。
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『【限定求人】異世界迷宮での冒険者を募集中!〈飯・寝床・女付き〉』
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「……は?」
タップすると、急に画面が白く染まった。反射的に目を閉じた、その瞬間――
「……っ!? なんだ、これ……?」
気づけば、草の匂い。土の感触。まるで……ゲームの中に入ったような風景が、目の前に広がっていた。
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🎮 画面表示:
《冒険者登録完了:ヨウイチ・カガミ》
《初期スキル:鑑定LV1/精算管理LV2/言語理解LV3》
《所持金:100リル/初期装備:汚れた服、ナイフ(サビ)》
《現在地:迷宮都市レーベルン近郊》
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「うそ……マジで異世界?」
夢でもなんでもいい。この現実よりマシだ。
──だが、そのとき。
「ひ……ひいいぃっ!! た、助けてぇっ!!」
森の奥から、悲鳴とともに駆けてくる少女の姿があった。
そのすぐ後ろには、大型犬のような獣が血走った目で追ってきている。
(逃げろ──そう思った。でも、身体は……動いた)
手にしたサビだらけのナイフ。腕も足も震えている。だけど、ただ見捨てるわけには──いかなかった。
「オラアァァァアッ!!」
ナイフを振りかざし、獣の首を狙って飛びかかる!
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