第23話カブトエビ
私が小学生のころ、出版社の「学研」から小学生向けの「学習」と「科学」という二つの双子の雑誌が出ていた。
「学習」のほうは主に文系の物語の読みものだったりが載っていたと思う。
「科学」のほうは文字通り、理系の情報が載っていた。
この「科学」と「学習」、月一回家に届くのだが、「科学」のほうには毎回付録がついてくる。
この付録が嬉しくて、嬉しくて。
奇想天外な付録が多く、ある時はコンピューターで再現した聖徳太子の声がテープに録音されており、「でも、これどう考えても人間の声を録音してるよね」という感じのいかにも嘘っぽいものもあった。
とある夏の日、いつものように「科学」の付録を開けると、なんと「カブトエビ飼育セット」と書いてあった。
そこには、飼育ケース、カブトエビの卵、カブトエビのエサが入っており、さっそく私は準備をし、ケースに水をいれて、カブトエビの飼育を始めた。
数日たつと、まぁ、ミジンコのように小さいカブトエビたちが、ケースの中をわちゃわちゃ泳いでいる。
これがかわいいのなんの。私はテンションがあがり、いつまでもその泳ぐ様子を眺めていた。
ところが、さらに数日たつと、様子は一変する。
カブトエビ、けっこう巨大化しはじめたのだ。
巨大化と言っても、大きさは1.5センチくらい。
だが、わさわさと数多い足を動かしつつ、水の中を泳いでる姿はまさに「G」のようであった。
「うわ~、これ気持ち悪い」と正直思った。
子供って飽きっぽいものである。
なので、私はカブトエビにあまり魅力を感じなくなり、近くの池に全てのカブトエビを逃がしてやった。
今思うと、「最後まで責任取って育てろよ」と過去の自分に言いたくなるが、まぁ、気持ち悪いものはしょうがないか、と思ったりもする。
今でもカブトエビの思い出はちょっとほろ苦いのだよ。
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