第53話 ドストエフスキー10
彼は今龍が考えていることの道筋を、百年前にすでに見つけていた。正解に気づいていた。彼は正しかった。過去世ドストエフスキーと、今世龍との二つの人生が連結された意味がそこにあった。それが答えだった。
1881年に60歳で死去したドストエフスキーの人生と、
2002年に生まれた龍の人生が直接つながった。
『過去世と、現世の二つの人生が連結された』
事実と意味を龍が知った。
この意味について龍は毎日考え続けていた。ドストエフスキーの過去世を持つ龍が、物語を著し、新しい常識を広める啓蒙活動を展開することで、多くの人々を救うことができるのではないかと考えた。もしこれを成し遂げなかったら、龍は本物の役立たずに成り下がってしまう。
この世界が、どのような姿であるべきなのかを広めることが、龍の役割であり、使命だった。多くの人類が同じ想いを持ったときに、初めて地球は護られる。
意識の目覚めた人が、新しい常識を啓蒙し、多数の意見に変わったときに、
地球と、人類は救われる構図になっている。
龍の場合は、過去世のドストエフスキーと同じで、幼い頃から、変人の兆しが芽生えていた。いつも不愉快で、なんだか知らない間に、原因不明の敵愾(がい)心が
ムクムクと絶えず湧いた。口を開けば、誰彼に関係なく、皮肉や、嫌味なことばかりいう。
こうなると、口下手などといったレベルではない。嫌われ者で、性格的に問題山積だった。内側からわいてくる苛立ち、漠然とした不安や、憎悪を抱え、恐怖に襲われた。楽しそうな人を見ると、毒づきたくなった。
医学部に入学し、啓のエネルギーが入ってから、そのような兆候がまったく現れなくなった。気がつけばいつの間にかゆったりと、幸せな気分になっている。
風邪もひかない。
完
人はどこからきてどこへ還っていくのか 番外編 詠方介 @kako_hime
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