第51話 ドストエフスキー7
龍も人を見分ける術(すべ)に長(た)けていた。本物を見つけるのが得意だった。だから啓をみつけることができた。
ドストエフスキーには良いところもある。彼は父殺しの犯人である農奴たちを責めていない。もし彼が責めていたら、処刑のとき、彼は間違いなく銃殺されていた。彼は、肺結核を患っているマリアと結婚する。兄と、39歳の妻が死に、兄の負債に苦しむ。
45歳で20歳の速記記者アンナと再婚する…。
ドストエフスキーは、借金に苦しめられ、ルーレット賭博にのめりこんだ。
『人は死んだらどうなるのか』
と考えていた。
50歳の時、実に恐ろしい姿をした父ミハイルが、夢枕に立った。物もいわず、耳も聞こえない亡霊が出た。ゾンビ姿の父が、夢でドストエフスキーを諫(いさ)めた。
心臓が凍(こお)る思いがして、10年に及ぶ賭博癖が治った。
肺気腫で喀血した彼は、1881年60才で死去する。肺気腫は煙草(たばこ)、煤(ばい)煙、糸屑(くず)などを長年吸いこみ、肺の機能が失われる病気である。彼がそのどれにあたるのかはわからない。
ドストエフスキーは人神論
《神の子が、人間イエスになったのとは逆に、人間も、神にならねばならないという考え方》を信じていた。彼は時代を超えて、現代人の内面を映し出す作家だと、
世界的に評価が高い。
作品を読めば、いつの時代の若者であっても魂を奥底から衝(つ)き動かされる。
彼は、都会の孤独な貧しい人の心の呻(うめ)きを再現した。罪人の魂の救済を求めた。猥(わい)雑(ざつ)な世界が、彼の文学の豊かさであった。主題は《人間の救済》である。
それが社会的・宗教的な伏線となって、作品を豊かにしていた。
濃厚な死の気分と、生きたいという意識との葛藤を描き、その登場人物の中に、自らの姿を投影させた。主人公になり切って、その内面を書いた。
魂の中にはそんな自分を冷徹に見つめる目を持っていた。作品と主人公に酔い、それを鋭く観察している別の自分がいる。その快感が創作へと向かわせ、駆り立て、登場人物に信念を語らせた。
過去世ドストエフスキーと、今世龍との違いはなにか。
龍は父を恨んでいなかった。だから癲癇にならずに済んだ。
前世よりも学習し魂が成長していた。
博打にのめりこんでいたドストエフスキーの魂は異次元で反省をする。
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