辛勝

◇九回表、クローザーの長崎が三者凡退に抑えて広島カーナビーツが辛勝した。


「なんとか勝ったぁぁぁ!」


「胃がちぎれるかと思いました……」


「今日は抑えたけど、普段の長崎は四者凡退、五者凡退が当たり前じゃけぇ、胃薬必須やね」


 劇場型守護神。主にリリーフとして登板し、ピンチになってから真価を発揮する、ドラマチックな展開を演出する投手と言えば聞こえはいいが、味方からしたら絶望しかない。


「それじゃあ、ウチは先に帰るけぇ。浅尾きゅんのヒーローインタビューも見れたし。そういえば、あんた名前は?」


「俺のこと? 梵俊介」


「緒方心春です」


「ウチは桜木莉子。毎日ここで見てるから、また出会うときがあったらその時はよろしゅうや。梵きゅん!」


「おう……梵きゅん?」



◇次の日



「新井……本当にやるのか?」


「ああ、やらなきゃ始まらないからな!」


「そうか。骨は拾っといてやる」


「なぜ玉砕前提なのさ!?」


 新井は今、『大和撫子の才女様』に告白しようとしている。てなわけで今はバス停で待ち伏せをしている状況だ。


「そんなことより、今日のカーナビーツ。先発は誰かな、斉藤かぁ……」


 新井の恋沙汰に興味がないのでスポーツアプリを見ていた。そのスポーツアプリを見て落胆していると……


「たいぎいのう~。今日の先発、斉藤なん? 昨年大炎上繰り返しとっちゃけど、大丈夫なん?」


 といった感じに、広島弁の女の子が言いたいことを言ってくれた。


 どうやらこのバス停には俺以外にもカーナビーツファンがいるようだ。


 パーカーにピンクのスクールセーターを着ている女の子。制服的に同じ学校だろうか。短めのスカートにニーソって、なんかエロい。


 ていうかどこかで見覚えが……



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