話を読む時、自分が読みたいと感じさせてくれるものの手がかりを探すようにしています。この話を読み始めた時、まず主人公の人格や恐れや苦手意識がどのように構成されて行くかを手短に、でも確実に書いているのがいいと思いました。
次に娘を気に掛ける両親の優しさの描写に寄り添うように失望や不安のようなものが書いてあり、向かい合った人間が与えて来る感情と、その人を見た時にこちらが感じる感覚、どちらも描写してあるので、多彩な人間の感情表現が東京での暮らしでも描き出されるのではないかと期待出来ました。
「いつでも帰ってきてもええんやから」
という言葉を見た時に、無性にこの話の全体像を読み進めて捉えてみたいと思いました。
この言葉には温かさと、嫌悪感を感じる人がもしかしたらこの世にはいるのではないかと私はずっと思って来て、そういう意味で他人の話で見つけると、ちょっと気になって読む理由にして来た理由だったからです。
この言葉に無性の温かさを込めて、最後に光り輝く砦のように話を書く人もいれば、最後まで主人公を捕らえる牢獄のように重く、執拗に響かせる人もいます。
私自身はこの言葉には否定的な意味を感じて生きて来ました。
でもだからこそこの言葉を温かく響かせる書き方も、
人を縛り付ける牢獄のように感じさせるような書き方も、
興味や共感で、描き出し方の違いをいつも興味深く思っている言葉なのです。
こちらの話がどちらなのか、もしかしたらそれとも違う別の書かれ方がされているのか、興味深く読み進めて行きたいと思っています。