第47話「愛の勝利!」

 私は、まぁ白銀の魔剣クロスレインを持ってるだけで戦うつもりもない。


 しかし、軍師の話は本当だったのか。


 サラの愛の宣言でクロスレインが悲鳴を上げてるのが伝わってくる。


 この魔剣が私の母親とは言え、まるで娘が他の女に取られるのが嫌な毒親みたいだな。


 そんな事を考えていたら、サラ、レミア、ディン、アサンが迫って来たので、みんなを傷付けないように適当にクロスレインを振るった。


 が、誰も傷付いてないが、軽く振っただけなのに遠くの山が真っ二つになってしまった。


 こわっ!? え、今の攻撃で誰も死んでないよね?


 この魔剣を無闇に振るのは止めよう。


「リミカ、愛してる! 大好き! だから、こっちに来て!」


『キィィィィアァァァァ!!』


 うわ!? 魔剣が叫んだ!? どんだけ愛が嫌いなんだよコイツ!


「う、うわわ、落ち着けクロスレイン! 魔剣のくせに暴れるな!」


 真実の愛を前にして、私の意思とは無関係に魔剣クロスレインが暴れ始めた。


「白銀の魔剣クロスレイン。いえ、リミカのお母さん! 娘さんを私にください!」


『イイイイイイヤァァァァダァァァァ!!』


 喋るのかーい!


 私が心の中でツッコミを入れていると、サラが第三階梯の魔法を発動した。


「第三階梯『イフリート』!!」


「聖剣エクスプロード!!」


「獣王拳『つい』!!」


「リヴァイアサンブレス!!」


 みんなの必殺技がクロスレインに直撃すると、クロスレインは悲鳴を上げながら私の手から落ちた。


 すると、サラが私に壁ドンして来た。


「じゃあ、いくよリミカ」


「お、おう」


 私とリミカが熱いキスを交わすと、クロスレインが断末魔を上げながらボロボロに朽ち果てた。


 あの魔剣が母親だったとは言え、なんか最後まで母親っぽくなかったな。


 この戦いを見ている魔界の住人達に向かって、ナレーションの獣人が語り始めた。


「皆様ご覧ください。クロスレインが破壊されたと言う事は、リミカ姫とサラの愛が証明された証拠です。サラが率いるクラウンバレットは見事リミカ姫を奪う事に成功したのです!」


 それを聞いた魔界の住人達から驚きの声が上がった。


「すげー! これが怪盗かよ!」「こんな面白い仕事があるなんて知らなかった!」「ワタシも怪盗になりたい!」


 こうして、魔界全体が死ぬ以外の道を選ぶのであった。


 ……あれ? この後はどうしよう?


 なーんにも考えてないまま私達は怪盗らしく姿を消して人間界に戻った。


⬛︎


 ーークロスレインの破壊を確認、リミカを人造人間から真正人間にする事を許可する。


 ーーリミカはもう魔王の娘でも魔剣の娘でもなく、一人の人間として生きる事を許可する。


 ーーこれにて、白銀の魔剣クロスレインの管理人格である私の役割を終了する。


 ーー皆様、お疲れ様でした。

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