第41話「軍師の正体」

「え? 軍師?」


 レミアとアサンの前に現れたのは軍師本人だった。


「読めていたぞ。この道で二手に分かれる事をな。残念だが即席の策だった故、元魔王軍の幹部を二人しか呼べなかった。だから聖剣使いのエルフとリヴァイアサンの相手は、この軍師がしますぞ!」


「なぁ、ずっと気になってたけど、アンタ本当に名前が無いのか? 元魔王軍の幹部なのにおかしくないか?」


 レミアの疑問に軍師は黙っていたが、アサンが軍師の思考を読み取った。


「なるほど、真名封印か。元々強力な魔物だが、強すぎるが為に自分の正体と名前を封印したな?」


「ふぉふぉ、さすがはリヴァイアサン。なら、もう隠す必要性はないですな。……真名断絶」


 すると、軍師の足元から膨大な水が出現したかと思ったら、アサンがリヴァイアサンの姿になって、咄嗟とっさにレミアを背に乗せた。


『気を付けろレミア! あの軍師は我と同じ海の魔物だ! 海の中で我と対等の強さを持つ魔物、貴様の正体はクラーケンだな!』


『ふぉふぉふぉ、そうだとも、我は海にいた頃から船乗りを襲った巨大な怪物。見た目は巨大なイカだから先代魔王様からは「キモい」と呼ばれてたトラウマがあります!』


 軍師の正体はクラーケンだと分かったが、巨大すぎる。


 リヴァイアサンであるアサンですら小さく見えるレベルの巨大な空洞のような口と10本もの触手を持っている。


 口と触手しか見えなくて肝心の胴体が見えないが、明らかに魔王城そのものを丸呑みできる大きさだ。


『ぬぅ、あのクラーケン、我々を結界の中に閉じ込めたか。なんせクラーケンとリヴァイアサンが魔王城で暴れたら魔王城が崩壊するからな』


 気が付いたら、周囲は海のような結界の中に閉じ込められていて、軍師の体が大きすぎて胴体が見えなくて、口と触手だけしか見えない軍師と戦う事になったが、それでも軍師は助言をくれた。


『あ、念の為に言いますが、リミカ姫の要望で手加減しませんが、クラウンバレットの皆さんが死んでも蘇生できる準備はできてます』


「準備万端だな軍師! 行くぞアサン! あの巨大な口に飲み込まれないようにしろよ!」


 レミアは聖剣を構えて、大きな口に向かって光の刃を飛ばした。


「エクスプロード!!」


 が、聖剣エクスプロードの刃が巨大な暗黒に見える口の中に吸い込まれて消えてしまった。


「はぁ?」


『落ち着けレミア! 軍師の弱点は胴体だ! あの口はあらゆる攻撃を飲み込んで無にする危険な闇だ! まずは10本の触手を回避するぞ!』


 10本の巨大な触手と巨大な口が襲って来る光景を見ながらレミアは後悔した。


 今からでも手加減してもらう事ってできないかな? 無理?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る