第37話「魔界の生殺与奪」

「ふぉふぉ、つい最近まで自分が人間だと勘違いしてて怪盗団を立ち上げていた? はて、この軍師が目を離してる間に、何をトンチキな事をやってたのですか?」


「私が立ち上げた怪盗団をトンチキ扱いするな! お前、さては口が悪いな?」


「ふぉふぉ、軍師ですので。ふむ、それでは困りましたな。リミカ姫は魔王の後継者になるつもりはないと? ふむむ、10分だけ時間をくださいな」


 ーー10分後。


「ふぉふぉ、この軍師の策をリミカ姫とクラウンバレットに授けましょう。すなわち『魔界ぶっ潰す大作戦』を決行しましょう」


「お前、軍師なのに過激派だな。え? 魔界潰すの? それって魔王を倒すよりも大変な作業じゃないか?」


「いやいや、これはリミカ姫にしかできない事ですじゃ。魔界の空に魔王様がかつて住んでた魔王城が浮いてます。そこにある『白銀の魔剣クロスレイン』があります。それを使えば魔界をぶった斬る事ができますじゃ。この魔剣は真の魔界の支配者しか使う事が許されない道具ですのじゃ」


「つまり、その魔剣を使って魔界を滅ぼせと? 軍師達や魔界の住人達はどうなる?」


「え? 魔界と共に死にますが?」


 嘘だろ!? 世界を殺すと言う事は、そこに生きてる生命体全てを殺す事じゃないか!


 な、何考えてんだ、この軍師は?


 これにはずっと黙ってたサラが割って入った。


「軍師さん、アナタの策は無謀すぎます。リミカに世界を殺させて、その罪を着させるつもりですか?」


「ふぉふぉ、天使のお嬢さん、まさか魔物に同情してますのかな? 良いのです良いのです、元々魔王様と共に死ぬ予定だった者達が死ねなかっただけの話ですし。皆も納得するでしょう」


「……私は納得しません」


 サラが珍しく怒ってる。しかし、軍師の策は明らかな自滅行為だ。


 いくら死ぬ覚悟ができてるとは言え、相手が魔物でも殺したくない。


「軍師、なぜお前は私の味方をする? それは人間界で生きてきた私を思っての事だろ?」


「ふぉふぉ、そうですな。なんせ、この軍師はリミカ姫の誕生を見た者ですからな。アナタ様の事を実の娘のように大切に思ってます。アナタ様の意見を尊重するなら、この軍師は地獄に落ちる覚悟ができてます」


「それでも納得できない。幸い、私達の中に人間は居ない。まずは魔界の住人達と話をさせてくれ。話はそれからだ軍師」


御意ぎょい、リミカ姫の意見を尊重します」


 私達は魔界とはそもそも何なのか知る為の旅を始めた。

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