第32話「聖剣VS聖剣」

「へぇ、我流かよ。だが、スジは悪くないな」


 ガラハンの聖剣ネメシスとレミアの聖剣が何度も激突する。


 レミアは我流の剣術だが、ガラハンは力任せではあるが、明らかに洗練された剣術を扱っていた。


「んじゃまぁ、名残惜しいが、いっちょやるか!」


 急に間合いを外したガラハンを警戒しながら、ガラハンは何かを言い出した。


「聖剣ネメシスはなぁ。使用者の恨み辛みを吸収して攻撃力を増す聖剣なんだよ」


「いやいや! 完全に魔剣じゃないか! ガラハンお姉さん、絶対に騙されてるぞ!」


「うるせぇ! いくぞぉオラァ!!」


 ドクンッドクンッ、と気持ち悪い鼓動を鳴らしながら、聖剣ネメシスが脈を打っている。


 ……キモッ!? 剣なのに生き物みたいで気持ち悪い! 怖い!


「う、おおおおお! 聖剣ネメシスよ、我が恨みを喰らいて走れ……この前のことだった。3年間付き合ってた彼氏にフラれた」


「はい?」


「結婚する予定だったのに、他に好きな人ができたとか何なんだよぉ!!」


 まさかの恋愛による恨みを吸い上げて聖剣ネメシスが異形の怪物に変身した。


 愛、怖いな。


 もはや剣と呼んで良いのかすら怪しい不定形の怪物になった聖剣ネメシスを構えて、ガラハンは突進する準備をしていた。


『レミアちゃん、レミアちゃん聞こえる?』


「え、その声って、折れた聖剣か?」


『うん、聖剣ネメシスは人間の邪悪な感情を力に変える危険な聖剣だ。だからレミアちゃんもボクを使ってくれ!』


「え、えーと、どうしろと?」


『こう唱えてみて、エクスプロードと』


「え、エクスプロードォォォ!!」


 レミアの聖剣から巨大な光の刃が出現したのを見て、ガラハンは信じられない物を見たかのような表情を浮かべた。


「な、それは聖剣エクスプロードかよ! その聖剣はエルフの女の子の恋愛心が力になる純白の聖剣じゃねーか!」


「ワタシ、そんな恥ずかしさの極みみたいな聖剣使ってたのかよ! 嫌だー!!」


 純白の光と漆黒の光が交錯するが、ガラハンは純白の光に飲み込まれて倒れるのであった。


⬛︎


「ぜーはー、わ、ワタシに恋愛心なんてねーし!」


 ガラハンを倒したので扉を開けようとしたが、ガラハンがレミアの足を掴んだ。


「ま、待ってくれ、お嬢ちゃんに頼みたい事がある」


「何?」


「お姉さんと恋人にならない? もう男なんて信用できないし、それなら女の子同士の恋愛なんてどうかなーと思って」


「えー、嫌だよぉ」


「うぐ、わ、分かったよ。でも諦めないからな! 絶対にお嬢ちゃんを堕とすからな! 絶対だぞ!」


 変な奴に目を付けられて、レミアは聖者の針を手に入れた。

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