第28話「演劇」

「クランシバルかぁ、どんな演劇旅団なんだろうな」


 ニシリカの人達は今夜クランシバルの演劇が見れる事でワクワクしていた。


「あんまし有名じゃないけど、でもさっきパンフレットを見たが、演劇では本物の巨大なリヴァイアサンや100人の獣人が出てくる大規模な演劇らしいぜ」


「リヴァイアサンを従えてるのか、その時点ですごいな」


⬛︎


「脚本、演出、全て私、アサンで考えたしリハーサルもした。後は本番なんだが……うん、演劇とか初めてだから緊張するが、後は手筈通りだな」


 私はクラウンバレットの面々と作戦会議をしていた。


 今回は、私、サラ、アサン、100人の獣人の内80人による大掛かりな舞台を開き、観衆の目が私達に集中してる隙にレミア、ディンが二手に分かれて聖者の針を奪うと言う事だ。


 ちなみに、残り20人の獣人はもしもの為に待機。


 最近分かった事だが、獣王となったディンには召喚サモンと言う能力があるらしく、この能力を使うと配下である獣人を好きな場所に召喚する事ができる。


 つまり、不測の事態が発生した場合の保険として20人の獣人には待機を命じた。


⬛︎


 一人の獣人の女性が巨大なステージの上でナレーションをしていた。


「こんぺたら〜皆様、来てくれて嬉しいです〜。今宵こよいは我等クランシバルの大舞台、演目名は『邪竜退治、勇者は姫を救えるか!?』です。完結なあらすじを言いますと、高度な知性を持つ邪竜リヴァイアサンに捕まった姫君サラを助ける為に勇者リミカが剣を取ってリヴァイアサンと戦うド派手な戦闘シーンが見どころです〜」


 それを聞いて観客達が盛り上がっていると、ステージ上から恐ろしく巨大なリヴァイアサンが蛇のように這い上がって来た。


「うおお!? 本物のリヴァイアサンだ!」


「かなりレアだぞ!」


 観客達の熱気が最高潮に達する中、邪竜役のアサンが観客達に向かって台本通りのセリフを言った。


『ぐははは! 愚かな人間どもよ、貴様らが見るのは演劇ではない、勇者の公開処刑である。弱々しいくせに我に歯向かう勇者を返り討ちにしてくれる!』


 あまりにも迫真の演技で観客達の興奮は更に高まった。


 タイミングを見計らって、ナレーションの獣人も台本通りのリアクションをした。


「きゃー! こんな恐ろしいリヴァイアサンに勝てる者なんて居るの!? でも皆様ご安心してください、勇者リミカは人々からの声援を受けると強くなる特別な勇者なのです。さぁ、勇者リミカの登場です! 皆様、勇者に拍手喝采を!」


 勇者役のリミカが剣(偽物)を持ってステージの上に立った。


「おのれ、邪悪なるリヴァイアサンよ。我が剣にてサラ様を返して貰うぞ!」


 演劇は2時間、つまり2時間以内に聖者の針を奪わねばならない。


 レミアとディンを信じてリミカ達は演劇を始めた。

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