第27話「ニシリカに入国」

 ーーニシリカ検問所。


「はい次……はい問題ありません」


 ニシリカへ入国する為には検問があった。もしもスパイとして内部調査をするなら入国審査を通らなきゃならない。


 そして、私達がもっとも怪しまれないように怪盗とは別の職業を演じる事にした。


「はい次……えーとなになに、演劇旅団『クランシバル』? 座長はリミカさんで、よろしいですか?」


 そう、私達は演劇旅団を演じる事になったし、すでにカエリア大臣の手配で架空の演劇旅団がニシリカに入国する事が決まっていた。


「はい、クランシバルの人達が来たのですが……はい、わかりました」


 検問官が魔術で誰かと通話をした直後に笑顔を見せた。


「お待たせしました。クランシバルの皆様、長旅で疲れたでしょう。我が国のサービスをご利用してください」


⬛︎


「ここが、ニシリカか……」


 クリアラス帝国とは違って鉄の建物が多い気がする。


 見た感じだと国民は嫌そうな顔とかしてないで笑顔で過ごしてるが、それでもレミアは文句を言っていた。


「ふっ、あの笑顔の裏に何が潜んでるのやら、ワタシ達で高額医療の闇を暴いてやろうぜ」


「レミア、闇を暴いてどうすんねん。仮に暴いても私達には何もできないぞ? あくまでも聖者の針を奪うのが目的だからな」


「ちぇー」


 レミアが不貞腐れていると、サラが近くの屋台に入って行った。


「これ、何のお肉ですか?」


「ん? ヒュドラの肉だよ。この国だと定番の料理だな」


 ヒュドラの肉と聞いて私はずっこけそうになった。


 は? ヒュドラって、私の両親を10年近くも苦しめてる毒の持ち主だぞ!?


 え、なに? この国だとヒュドラを食うのが当たり前なのか??


 私が疑問符だらけの中、サラが私達の分のヒュドラの肉串焼きを持ってきてくれた。


「はい、どーぞ」


「どーぞじゃなーい! それ猛毒があるモンスターの肉だぞ!?」


「でもでも、よく見てよリミカ、ニシリカの人達は平気で食べてるよ? ヒュドラ程の毒のあるモンスターの毒抜きができるレベルの高度な技術があるんじゃない?」


「怪しいわ! 食った途端に倒れて病院送りにされて高額医療費を突きつけられるだろ!」


 私が抗議をしてると、サラ、ディン、アサンがヒュドラの肉を食べた。


「あ、美味しい」


「がうがう! 中々の美味だぞ!」


「信じられんのぉ、完全に毒がない。ヒュドラから完全に毒を抜けるとは、この国の技術力の高さを感じるぞ」


 マジか、一応ヒュドラって、私の両親のかたきみたいなモンスターなのに、そんな奴の肉食って良いのかな?


 私とレミアが顔を合わせてヒュドラの肉を口にした。


 ……本当に美味しいのが、なんか悔しいな!

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