第11話「折れた聖剣」

 ネルソン家の屋敷は豪邸ごうていで、すみずみにまで清掃が行き届いている。


 私達はメイドに変装して屋敷を歩き、そして折れた聖剣のある部屋に辿り着いた。


 本当に番人が居ないか、罠がないか慎重にチェックした後に、私達は床に刺さってる折れた聖剣の前に立った。


「うーん、これ、これなんだよね? 誰からやる?」


「がうがう! ディンがやりたいぞ!」


 と言う事でディンに一番手を譲ったが、ディンの獣人としての怪力があっても抜ける気配がなかった。


「ぜぇ、はぁ、がうがう! この聖剣嫌い!」


「次はワタシだな」


 次はエルフのレミアが手を伸ばそうとしたが、レミアがある事に気が付いた。


「あ、ここでリミカのコードブレイク使えば良いじゃん。アレってあらゆる魔術、ステータスを剥ぎ取る禁術だろ?」


 あちゃー、すんごい忘れてた。


 そ、そっかぁ、私ならワンチャンあるのかー。


「よ、よーし! コードブレイク『アルテマ』!!」


 私が聖剣に向かってコードブレイクをすると、レミアがあっさりと聖剣を抜いてしまった。


「やっぱりコードブレイク万能すぎだろ」


「ふ、ふははは! さすがはレミア! このまま逃げるぞ!」


 私達が逃げようとすると、部屋全体にアラームが鳴って、全身に鎧を着込んだ兵士達が雪崩なだれこんできた。


「チィ、やっぱり罠だったか。サラ、ディン、アサン、私達で戦うぞ! レミアは聖剣を落とさないようにしてろ!」


 私達が戦闘態勢に入ると、突如として聖剣が光出して、折れた刀身から光の刀身が出現した。


「は? レミア、お前何かしたの?」


「し、してないしてない! この聖剣が勝手に……うわぁ!?」


⬛︎


 翌日の新聞によると、ネルソン家の屋敷から流星のような光が飛び出して、大量の兵士達が宙を舞う瞬間が撮影されて、しかも折れた聖剣が奪われた事でネルソン家の地位が失墜するのであった。


「え? 聖剣が離れない?」


「あ、あぁ、何度も離そうとしてるのに、何故か手元に戻って来るんだ」


 レミアが腕を振り回すが、聖剣が離れる気配が無い。


 何なんだこの聖剣は?


「ほぉほぉ、レミアちゃんの手の感触が気に入ったらしいですよ」


「え、サラは聖剣と会話できるの?」


「うん、つまりコードブレイクが無くてもレミアちゃんなら抜けてたみたい」


 あれー? 私の出番はー?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る