第4話「王族と貧民」

「実は私は人間と天使のハーフでした。イェーイ」


「何がイェーイだ! え、それ帝国民とか貴族とか知ってんの!?」


「知ってるのは私の両親だけ、驚いたかなリミカ?」


 私が呆れ返っていると、エルフのレミアが溜め息を吐いた。


「とんだジャジャ馬を拾って来たなリミカ、帝国は今ではクラウンバレットに加入した謎の仮面少女サラの話題で盛り上がってるぞ?」


「がうがう! 天使って、どんな食い物だ?」


「ディン、天使は食い物じゃ……いや待てよ、一周回って天使の羽とか食ったら第三階梯の魔術使えるんじゃね?」


 レミアとディンが盛り上がる中で、ここはボスらしく私が指揮を取った。


「ま、まぁサラの人気も爆上がり、クラウンバレットの人気も更に爆上がり、4つの貴族の一つであるカラトリ家を制した。残り三つだ」


「あのー、王女である私がかなり前から気になってたのですが、クラウンバレットって、盗んだ財宝はどこに持って行くのですか?」


「あん? ……まぁ良い、サラとは短い付き合いだと思うし、私達の故郷を見せてやるよ」


⬛︎


 ーークリアラス帝国貧民地区。


「リミカだ! 昨日も大活躍だったな!」


「サラもカッコよかったぜ!」


 貧民地区の人々から英雄の凱旋がいせんのような歓迎をされて私、サラは困ってしまいました。


「え、リミカ達って、いつもこうなの?」


「んー? まぁ私達全員が貧民地区出身だからな。お姫様のサラにはぜーんぜん分からないよな? だって私達のように飢えに苦しんだ事とかないだろー?」


「むー、なんで意地悪言うの?」


「私達は王族とか貴族とか好きじゃないからなー。ここから私、レミア、ディンの三人で貧民地区で苦しんでる人達を助けようと決意してクラウンバレットを作ったんだ。基本的には奪った財宝は闇市に売る。その後に財宝がどうなろうが知らん」


 分かってたつもりで何も分かってなかった。


 生まれた時から城の中に居たから何も知らなかった。


 大臣が持つ強欲のネックレスの影響があるかもしれないけど、こんなにも飢えに苦しむ民がたくさん居たなんて知らなかった。


 憧れでリミカを追いかけて、憧れでクラウンバレットに入ったけど、私はリミカ達の事を何も知らなさすぎてたんだ。


 そんな事を考えていたら、思わずリミカの手を握ってしまった。


「な、なに?」


「私、これからリミカの事をもっと知るね! 何も知らないお姫様の役をいつまでも演じたくないから!」


「熱意は伝わったけど、手を離してくれ、その……恥ずかしい」


「ご、ごめん!」


 レミアとディンから微笑ましい目線を感じて私まで恥ずかしくなってしまった。

 

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