第2話 自由落下の取扱説明書(非同梱)
風が、俺に襲いかかってきた。
それは木々を揺らす穏やかなそよ風でもなく、冬の夜の冷たい風でもない。それは
老いぼれ《おいぼれ》の神め、臭くて、
怒りが、高所の寒さの中で俺を温める炎のようだった。一体どんなサディスティックで
(ポータルはなかったのか? 地面に輝く魔法陣は? 眠っている間に穏やかな移行は?)
違う! どうやら、
俺は自由が欲しかった! 自分の運命を選びたかった! だが、俺の身勝手な妄想の中に、「異世界の海中に肉と骨の
◇◇◇
俺の
白い点。小さな船が、不自然なほどの速度で波を切り裂いている。希望という、愚かでしぶとい感情が胸に芽生えた。近づくにつれて、人影が見えてきた。二人だ。
一人は、2000年代の海賊漫画の表紙からそのまま出てきたような男だった。重力と常識を無視した
彼の隣には、女がいた。そして「隣に」と言う時、彼女がそこにいることは間違いないのだが、彼女の服は休暇を取っているとでも言いたげだった。辛うじてタンクトップと呼べるほどの同じ色のトップスと、服というよりは概念に近い短すぎるショートパンツを身につけていた。その体は引き締まっていて日焼けしており、それは印象的だったが、「普通の人」としての俺の頭はただ一つだけ考えていた。
(一体誰がこんな格好でヨットに乗るんだ? この世界には航海のドレスコードはないのか? それに日焼けの危険は?)
(もし助けてくれたら?)
その時、俺は気づいた。この日の空中ショーはまだ終わっていなかったのだ。
俺の右側から、気になる
一人は、燃えるような赤毛を野生的なポニーテールにまとめた女だ。彼女は前方に立ち、腕を広げ、顔には
その後ろで、命がけでしがみついているかのように(実際そうだったのだが)、金髪の男がいた。彼の長いスタイリッシュな前髪が片目を覆っている。「クールでミステリアス」に見せるつもりだったのなら、みじめな失敗だ。彼の唯一見えている目は純粋な恐怖で大きく見開かれ、口は音のない叫びで開いており、俺にはそれが精神的なレベルで感じられた。
(ついに! 死にかける状況に適切なパニックで反応する奴がいた!)
金髪の怯えた男に、俺は奇妙で
状況は「
異世界での初日、俺はすでに人間ビー玉と化していた。
あの神は、俺を死に投げ込んだだけではない。俺の死をスポーツイベントに変えたのだ。次に会った時は、あの老いぼれめを必ずぶん殴ってやる。もし来世があるなら、まず魂管理課に正式な苦情を
水面はもう十分に近く、個々の波が見えるほどだった。サメ男の笑顔はさらに大きくなった。石の彗星は数秒の距離まで迫っていた。
俺の叫び声が、ついに風に打ち勝った。
――――――――――――――――――
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