終わる世界の審判者
@Nakaya_Tsukasa
第1話 戦争ですべてを失った男
世界の終わりを望むもの
1942年 2月
そこにいるのはこの男一人のみであった
血だらけの服、憔悴しきった顔、そして怒りに満ちた目、、
周りの地面は濁りかかった赤茶色に染まっている
空に浮かぶ灰色に染まった雲はこの男を押しつぶさんと言わんばかりに周りを取り巻いていた
男は「アレクセイ・グリゴリエヴィチ・ヴォロノフ」この男はもう2日何もしていなかった
(この男はこのまま死んでいく道を選ぶのだろうか、、、)
あぁ、そうだ この男はただの善良な農夫、たしか17歳の時に農作業中に運悪く冬眠から目覚めちゃった熊さんに利き腕を引きちぎられているから戦争にはいかなかった。
時間だけが経って行った、雪が戦争の惨劇を覆い隠していく
どれだけ時間がたっただろうか
俺はとっくに気づいていた。ずうっと前から誰かが俺を見ていて振り向くのをずっと待っている。
後ろで待っているのは死神か?悪魔か?
、、、ちくしょう、そんなことどうだっていい。得体のしれない何かは何がお望みなんだ?
、、、この男が2日間ほど見つめる先には生前の美しさを見ることのできない体中が血にまみれ持て遊ばれた男の妻の死体が横たわっていた。
(誰が見てもわかるだろう、戦争中に偏狭な農村部で起こること。もちろん敵軍による徹底的な略奪だ。家は燃やされ村民は殺されこの男の妻もおもちゃかのように扱われた後殺された。)
ほんっとに、いつの時代だってそうだよ、、、
そんなことを考えているうちに男はゆっくりとこっちを振り返った
男「おまえは誰なんだ?そして何をするつもりだ、、、?」
私は微笑みいつもの言葉を投げかけた
「私はこの世界を見ている者。 きみは世界の終わりを望むかい?」
少しの沈黙が流れる
男は立ち上がり、ひきつった笑いを見せた
「何言ってんだよぉ!!!。世界などとっくに終わってる!!
あの笑ったクソ野郎、彼女の叫び、俺の無力……そんなものの上に続く未来が、どんな価値を持つ?」
この世界を見ている者は何も言わない
男はまくしたてる
「一体何なんだよ、お前は俺の妻を生き返らせてくれるのか?そんならどんな代償だって払ってやるよ!!このдемон(悪魔)め!!!」
「死んだ者は生き返らない」
男は力なく地面に膝をつく
「んなことはわかってんだ、、、」
「君はこの世界が憎いだろう?」
「あぁ、こんな理不尽に奪われる。そんな世界はくたばっちまえばいい」
この世界を見るものがそっと手を伸ばす
「君が私にYesといえばこの世界は終わる。きみの恨むものはすべて消える」
「さぁきみは世界の終わりを望むかい?」
讃美歌のような美しい声が男の頭の中に響く
究極の質問だ
男はどうこたえるのだろうか
男はもう何時間見ていたかわからない冷たくなった妻の顔を見つめた
「終わらせたら、彼女の記憶も消えるんじゃないのか?」
怒りの底で、彼はまだ“誰かに生きていてほしい”と願っていた。
“彼女の笑顔を知る誰か”が、この世界に残る限り。
「それに俺が恨んでいるのは世界じゃあない」最初から答えは今は亡き妻に教えてもらえていたのかもしれない
「君のその矛盾が、人間そのものだ」と私は言った。
男は膝をつき、地面を見つめながら呻くように言った。
「……終わらせるなら、俺の魂だけ燃やせ。彼女の記憶を抱いたまま、灰になってやる」
私は、彼の側に立ち、しばらく空を見上げた。
星はひとつも見えなかった。
そしてまた、私は世界の終わりを延期した。
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