第27話 アルバイト

― アルバイト ―


 ムツ李は高校受験に受かって直ぐ、アルバイトを始めた。高校の学校側は勿論アルバイトを禁止する様な事はしない。むしろ、社会経験をして来て下さい的な感じだ。アルバイトに関しても親と自己責任という事で任している。アルバイトを始めたからと言って成績が下がったと言う様な話も聞いた事が無く節度を持って皆、学業とバイトを両立させているのだ。ここに部活を入れている強者もいる。


 ムツ李は幼い頃からコーヒーが好きだった為、カフェで働きたいと思っていた。そして、小さい時から栞と一緒に足繁く通っていた「欲しいの?珈琲」というチェーン店に面接に行き、直ぐに採用が決まった。大浦戸高校の生徒というだけで、採用率が大幅にUPする。それだけ信用があるという事だ。まして、顔見知りなので面接をするまでも無かった。

 そして、他にもアルバイトが3人程決まっているらしくムツ李はドキドキしていた。もしかしたら、カッコイイメンズでそこから恋に発展し彼氏、彼女的なお付き合いになったらどうしようなどと、良からぬ事も想像してしまうのだ。流石現役女子高生である。



― 3か月前のアルバイト初日 ―


 アルバイト当日は店舗のスタッフルームに集められ、新人アルバイト達は初の顔見合わせとなった。スタッフは店長の他社員が2名だ。その他はアルバイトで賄っていて、卒業と共に4名がが辞めてしまい人員が不足していたという事であった。

 そして、アルバイト達は俯いていた顔を上げて一斉に周りを見渡した。

次の瞬間、ムツ李の他3名はビックリしてつい声が出てしまった。


「えーっ、何であんたがここにいるのよ、代志美!」


「それは、こっちのセリフよ、ムツ李!何であんた・・・ここ面接してたの?」


「そんな事より、あなたバイトはしないって言ってたわよね、エリ!」


「てへぺろ!」


「て、言うか何であんた迄ここにいるのよ、竿竹シナル!」


「てへぺろ!」


「てへぺろじゃねーわ!私はここでイケメンの彼と知り合ってラブラブのバイト生活を送ろうと・・・アッ・・・つい本音が・・・」

「て、言うかあんた達が入って来たらイケメンの彼が雇って貰えないじゃない。どうしてくれるのよ~」


すると、店長が会話に入って来た。


「まぁ、まぁ君達はビックリすると思っていたが私はそうでも無いのだよ。ムツ李ちゃんの事は昔から知っていてウチのお客さんだったから。それで大きくなったらウチに面接に来てくれないかなと、常々思っていたからね。お母さんの栞さんとも仲良くさせて頂いているので、私にとっては願っても無い事だったですから」


「そして、ムツ李ちゃんが面接に来て大浦戸高校の生徒さんになっていた事が分かりました。大浦戸高校の生徒さんは礼儀も良いし、頭も良い。そして、皆さん考えて動く事が出来るし、笑顔も素敵だ」

「大浦戸高校の生徒さんが面接に来たら極力雇う様にしているよ。それはウチだけでは無いはずだ」


「そして、たまたま他の3名も同じ学校の生徒さんだと分かったのです」

「ムツ李ちゃんに話そうと思っていたけど、そこはプライベートな事なので黙っておきました」


 そう、代志美とエリそして竿竹も同じ大浦戸高校の生徒となっていたのだ。


「ですから、これからウチの2名の社員さんと一緒に宜しくお願いします。ウチの社員さんも中々のイケメンさんですよ。1人は男性で、もう1人は美人の女性です」

「小井池君、ちょっと良いかな?新しく入って来た皆さんに自己紹介をお願いしますよ」

「河合さんも、お願いします。開店前で忙しいと思いますが、ちょっとだけいいかな」


「あっはい」

「・・・・」


爽やかな足取りでムツ李達の前に現れたのは、2年目の男性だった。


「ここで働いて2年目になる、小井池 免太郎です。今年22歳になりました、宜しくお願いします」


少しの間を開けてもう1名の社員が来た。4年目の女性だ。


「河合 伊緒奈と申します、どうぞ宜しく。言っておきますが、私は新人だろうが、アルバイトだろうがキビキビ動かない方には、厳しく指導します。私は私なりのポリシーを持って仕事をしていますので、邪魔をしない様にお願いします。そして、当店の方針はお客様ファーストですから、お客様のクレームなどには迅速に対応を・・・・・・」


 河合がアルバイト達に長い激励をしていると、店長が話しを裂く様に割り込んで来た。


「まぁ、まぁ今後の事はまた後でという事で、皆さんこれから宜しくお願いしますね」

「では、風森エリさんと竿竹シナル君は、小井池君の指導の下で仕事を覚えて下さい」

「赤坂ムツ李さんと祭林代志美さんは、河合さんの下で仕事を教わって下さい」

「では、では、では・・・」


店長は必要な事を言うと、厨房に入っていた。

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