第7話 クリス教官との訓練で、初依頼に出発する。
(鑑定スキル)
おっと出たな。
この辺りは雑草だな。ええと、正面の木の下あたりにあるのが、「ボイド草」らしい。効能は後でもいいか。
ええと、あれ? ホーンラビットのいるところに魔力草が群生してるけど。道からは外れてるな。
「教官。ホーンラビットのいるあたりに魔力草が群生してます。正面の木の下はボイド草ですね」
「はあ? なんでわかるんだ」
「ええとスキルに鑑定があります。レベル1ですけど。それを試してみました」
「なるほどな。いろんなスキルを持ってると聞いてたが、鑑定か。これはいいぞ。魔物に対しても使える。ドンドン使えばレベルが上がる。そうか、じゃあ、ボイド草を取りに行こうか」
そう言われて、ホーンラビットの気配を感じながら、正面の木の根元に向かう。
鑑定で確認すれば、地面の上でカットすればいいらしい。
短剣を抜いて、地面に押し当て、手前に引いてみれば、簡単に採取できた。それを確認してもらうと、上出来だと言ってもらったので、次々と採取する。こういう作業は慣れたものだ。
荷解きの時、梱包を開けていたからだ。あたりにあったものを大方採取すれば、そこそこの数になった。
素材袋を取り出して、そっと中に入れる。それは背負いカバンに入れた。
「じゃあ、ホーンラビットを狩るか」
そう言われて緊張する。
「緊張しなくていい。問題ない。さっきの短剣裁きを見て確信した。だが、とりあえず、長剣で行くか」
わかりました、と短剣を鞘に戻した。
何気なく歩いているように見せて、魔力草に近寄っていくと、ホーンラビットが飛び出してきた。
速いぞ、これ。
少し戸惑ったが、なんとか視線で追えそうだ。
長剣を抜いて飛びかかる獲物に剣を振る。
なんとか、一頭目は倒した。だが、次々とやってくるので、息つく暇もない。
教官は、近くて自分のところに来たものだけ薙ぎ払っている。ああいう振り方もあるんだな、と半歩引いてから、薙ぎ払ってみた。
これなら周りがよく見える。近すぎると、視野が狭く感じていたが、半歩引いただけで全くちがった。なるほど、剣を使う時には、自分の身体の大きさや腕の長さ、獲物との距離などを考えて戦った方がいいんだ、と理解した。
どんどん出てくるので、もう半歩下がって、薙ぎ払う。うん、二匹倒れたな。あ、でも一匹は死んでない。
それを頭に置いて、次に対応する。
残り三匹だ、と思った時、踵を返したホーンラビットは、森へと走り去った。
振り返って、さっきの一匹を確認してトドメを刺す。他の獲物は、全て事切れていた。
さて、これは血抜きをした方がいいんだろうか。
「よくやった。途中で戦い方を変えたな? どうしてだ」
「教官の戦いを見て、半歩引いてみたら、視界が広がったので、楽になりました。途中でもう半歩引き、腕の長さと身体の大きさを意識してやりました」
なるほどな、と大きく頷いてくれる。
「じゃあ、早く袋に入れろ。持ってるか、素材の袋」
「はい。ホーンラビットは、全部持ち帰っても買い取ってもらえますか?」
「大丈夫だ。早くしろよ、魔物が匂いに惹きつけられてくるから」
わかりました、と背負いカバンから、取り出したのは討伐部位などを入れる袋だ。かなり大きいので、全部入るだろう。
最初に倒したものから次々入れて行く。魔物の血でも、半分以上にならないと、染み出すことはないらしい。
血抜きをする暇がないから仕方がない。
全部で八匹いた。
口をしっかり結んで、背負いカバンに入れた。その時、薬草の入った素材袋は出しておく。
急がないと、他の魔物が来ると困るからな。
鑑定で確認すれば、同じように採取したんでいいらしい。
短剣を取り出して、次々と採取してゆく。
30分と少しの間採取して、全てを素材袋に入れた。
そして背負い鞄に入れておく。
「あ? それ、マジックバッグか?」
「はい。アークさんに若い頃に使ってたお古だと、もらいました。とても便利です。でも、時間は遅くなるだけらしいです」
どれくらい、と聞かれたので、百分の一だと聞いたと言えば、すごいな、と驚いてる。
どういうことだろうと聞いてみれば、同じ時間の進み方が百分の一になるんだぞ、と言われた。一日が百日になるんだ、と言われてひっくり返りそうになった。
でも、ご主人は、この近くの森なら持って帰れるって……
「それがすごいんだよ。この街の森の端まで歩いて、どれくらいの時間がかかるか知ってるか?」
そう聞かれても全く知らない。
どうやら、街から端まで行くのに、人の足だと早い人で三日かかるらしい。西の端までだと、早い人で五日だという。
「片道ですか?」
当然だ、と聞いて、また驚いた。ということは、往復十日でも、さほどの時間経過はないということだ。
「どうしよう。とんでもないものをもらっちゃった。返しに行かないと」
「それよりも、アークは恵まれてたんだな、駆け出しの頃からこんなものを使ってたのか。さすが、大商会の息子だよ」
大商会?
「そうだ。親父さんは元冒険者でな。コツコツ貯めた金を元手に商売を始めたらしい。あの性格だから正直に商売をしてた。荷物の配達業もやってたからな。自分の身体で稼げるから、と毎日働いていたらしい。評判になって、ついでに仕入れたものも売り始めた。それで今だよ。お前のことが気に入ったのは、わかる気がする」
それほど、俺のことを。
ありがたい、本当にありがたいよ。
でも、それほどアークさんは討伐には出ていなかったらしい。そう言えば、同じようなもの、持ってた気がするな、とひとりで頷いてるんだけど、クリスさん。
「移動して、飯にするか」
はい、と後をついてゆく。とっておきの場所を教えてくれると聞いて、嬉しかった。
道中、小枝を拾いながら歩く。別の袋を取り出して、枝を放り込みながら進んだ。
固形燃料じゃないのかと聞かれたので、節約ですと答えれば、いい考えだと頷いてくれた。
最近の若いやつらは、なんでも買って済ませるそうだ。だから、いいものを持ってるらしい。
「あ、でも、俺も食い物はかなり金がかかる方です。昼にと思って、サンドイッチと肉串を買ってきました」
「今はいいさ。そのうち、護衛に出るようになれば、肉も干し肉か、自分が狩りをした肉になる。解体も必要だし、干し肉は固い。だからスープにすればいいんだよ。芋やネギなんかを持ってたらいい味が出るからな。あと、旅のパンは硬いぞ。だけど、お前のマジックバッグなら日持ちもする。だけど、ふわふわのパンはいいところ二日だな。あとは、旅のパンか、クッキーみたいな分厚いカタパンというのがある。それなら、バッグに入れておけば長持ちするぞ。強者だと、小麦粉を練って焼いたりスープに入れたりしてたな」
カタパンか。覚えておこう。あと、干し肉とか芋、ネギだな。
しばらく歩けば、ここだと指差してくれる。
見れば、広い岩がある場所だ。綺麗で平らな岩だか、こんなのはみたことない。
ここで食うぞ、と言われて、とりあえず火を起こすことにした。
教官は固形燃料みたいだ。
俺は、分厚い革の敷物を取り出して窯を出す。
拾ってきた薪を山形に組んで窯に入れて、生活魔法で火をつける。乾燥した枝は、すぐに燃え上がった。どんどんマキを出して、落ち着くのをまつことにする。本当に綺麗に燃えるな、と感心しながら、蓋を開けて生活魔法で水を出す。
ガブガブ飲んでいると、呆れられた。でも、甘い水だから俺は大好きだ。
炎が落ち着くまでに、サンドイッチを出して卵に食らいついた。うん、うまい!
そろそろいいかと、肉串を取り出して火に当てるとジリジリといい音がする。付属の網を取り出して、竈に置いて温めてみた。串が焼けないようにとひっくり返しながら、サンドイッチを食う。
途中で焼けた肉を手に持ち、もう一本置いておく。
そこそこしっかりあったまってて嬉しい。
ガツガツと肉を食いながら、水を飲む。うまいなぁ、と目を閉じて噛み締めている。
そんな風に食べながら、魔物の探索は忘れない。
今のところ、何も感じないけど。
思ったより腹が膨れてしまった。
教官は、簡易スープみたいなものと、普通のパン。あとは、保存容器に入った肉を食べてる。そうか、アイテムボックスがあるから、ぬくいのか。
いいなぁ、と思っているが、俺もそれほど冷えてなかったということは、時間経過が遅いからだろう。
とりあえず、腹一杯食って、水を飲む。
クリスさんはケタケタ笑うんだけど。
「甘くてうまいですよ、水」
そうか、とまだ笑ってる。
「そうだ、お前、色々スキルがあるんだろ? 浄化はないのか?」
浄化?
ちょっと見てみるかな。
「ステータス」
あ、出てきたぞ。
スキルの欄を確認するんだけど、未開放というのがいくつかある。なんだこれ。まあ、いいか。
ええと、浄化、浄化、じょう……
あ、これかな。
どうやって発動するんだろう。
「分からないことがあれば、そこを押してみろ。出てくるから」
押すのか?
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