第4話 ロッカ冒険者ギルドは初心者に優しいギルドだ。

「ルノ、この人がショップの店長だ。お、見つけたか。これいいだろう? 脚もたためるから小さくなるしな。多少重みはあるけど、問題ない程度だ。それの箱型もあるぞ。これみてくれ」

 

 ああ、本当に小さな箱型だ。

 上に穴が空いてるな。あと、焚き口はここか。一番下には網がある。で、その下には穴がいくつか空いてるな。でも、これ、そのままで火をつけてもいいのか? あ、あっちにも穴があるな。小さい穴が三つずつ空いてる。


「これはな、この網の上に枝や少し太い枝を入れて火をつけるんだ。で、この下の穴から空気が入って上にあがる。それで火力が増すんだよ。この上に網を置けば、火が落ちついたら肉も焼けるぞ。炎が出てると肉の外側だけが真っ黒になるからな。火が落ち着いたら肉をおけばいい。パンは、この串に刺してあぶれる。手元で距離を調整できるからな」


 なるほど、これなら多少風が吹いても方向だけ考えれば使えるか。それに、この串に肉を刺して火から離してあぶれば、長時間待つこともないか。最初の炎だけ避ければいいだろう。


「これ使いやすそうですね。いくらですか?」

「それかな。登録したばかりかい?」

 

 そうです、といえば二割引いてくれるらしい。うれしい! 初回は二割引だと聞いたので、他に必要なものも買うことにした。当然、鍋のセットも買うことにした。

 アークさんによれば、これが一つあれば、スープもできるし、肉を煮込むこともできるらしい。

 ひとりだから沢山はいらない。食器も蓋が皿にもプライパンにも使える。鍋はそのまま食器にもなるから。あとは、フォーク、ナイフ、スプーンのセットだ。

 それ以外にも、素材袋というのが便利らしい。薪を入れてもいいし、薬草を採って纏めてもいい。少し高いもので、討伐部位や魔物を入れておく大きめの袋もあった。どれくらいあったらいいか、とアークさんに聞いて、数を揃えた。

 他には何が必要か、と聞いてみた。


 店長さんによると、調味料とは名ばかりの冒険者用のものがある。塩とコショーが混ざっているものらしい。少し高価だが、あれば便利だろう。それと小瓶に入ったソースだ。いろいろセットになったものがあったので、それでお試しだな。

 続けて使うようなら、詰め替え用もあるらしい。それに容器の中を綺麗にすれば、別のものも入るから。

 料理なんて、孤児院でしかしたことがなかったから、ひとり用を作るのは大変な気がする。


 調理関係は、別の袋を買うことにした。それなら間違えることはない。

 あと、灯りはどうするのかと聞かれたので、生活魔法が使えると言えば、この筒に火種を移せば、夜でもそこそこ明るいらしい。夕食の時でも、灯りがあるとないとじゃ全く違うだろう。

 こういうのもあるよ、と出してくれたのはランプだ。上でつるしてもいいし、地面に置いてもいいらしい。でも、魔石か魔力が必要だと聞いて考える。俺の魔力は魔法を使うためじゃないと聞いた。


「スキルのための魔力だね。おそらくそれでも問題ないよ。あまり大きくなくてもいいだろうから。魔力、入れてみる?」


 いいのかな、と聞けば新しいのを出してくれた。売るにしても魔力が入ってるのは問題ないらしい。

 それなら、とここに指をと言われたので、人差し指を押しつければ、すぐに満タンになったようだ。

 

 生活魔法で火をつけてと言われたので、ガラスを持ち上げて火をつけてみた。

 すると、真っ直ぐに燃え上がったんだ。正直驚いた。

 アークさんも驚いてた。

 

「全く問題なく使えるよ。これなら回りも安全だよ。それほどの値段じゃないからね。あとは、低いテーブルだね。同じ高さの折りたたみ椅子もあれば楽だけど」

「テーブル? 椅子、ですか?」


 そうだよ、と見せてくれたのは、薄い板だ。パチンパチンと音がして、板を開くと脚が出てきた。本当に小さいね。

 隣りにあったのは、椅子なのか? 


「この中には、いろいろ入るからね。ここを開ければ、荷物が入るよ。最初はここにクッションがあるんだよ」

 

 そう聞いて開けてみれば、クッションがある。それを椅子の上に置いて座るらしい。でも、俺には小さすぎる気がする。テーブルも低いし。石でもいいかと思っちゃった。


「そうだね、ルノの筋肉はすごいから、小さくまとまって座るのは辛いかも。それならシートの方がいいかもね。このシートを広げて座ればいいんだよ。テントの下に敷く物だけど、いろいろと使えるんだ。雨の日でも、テントの中に敷いてからマットを置けば濡れないから。テーブルは鉄の方がいいかもね。テントの中で火を起こすこともあるだろうし。あとは、ケトルくらいか」

「そうかもね。じゃあ、鉄のテーブルというか鉄の箱があるよ。これにも中に物が入る。閉じれば、テーブルに使えるし。お茶を入れたりするのかな?」

「うーん、テントの中ではしません。生活魔法の水でいいです。甘い水なので美味しいんですよ」

「そうか。それならいいね。真冬は厳しいけど、今から暑くなるから大丈夫だろう。あとはテントと雨具か」


 そうか、雨具も必要だな。


 テントを出してもらって、実際に組み立てているものを見せてもらう。

 これ、床が痛いな。


「ここにはマットがあるからね。このマット、どうだろうか」

 

 なるほど。孤児院のベッドマットくらいだな。


「これでいいです。もっと厚みのあるものが楽でしょうけど、毎日これくらいだったので」


 ええ? と二人に聞かれた。

 だから、孤児院のベッドのマットと同じだと伝えれば、辛そうにみられてしまった。


「とりあえず、それでお願いします」

 

 そういえば、テントの新品を出してくれた。中にマットはあるらしい。それで、ともう一枚マットを出してくれたんだが。


「このマットだけど、少しサイズが小さいんだよ。だから上にでも敷いて。お金はいらないからね。縫った人が間違えたらしい。あと、毛布はこれね。そして……」


 次々と出してくれる。

 鉄の箱、テント下のシート、鍋のセット、カトラリーセット、四角い鉄竈、あとは、串を五本だな。それとスパイスとかは袋に入れてくれた。


 二割引いてもらって、銀貨三枚だった。

 これくらいなら大丈夫だな。

 

 お金を払って、礼を言う。

 そして大きな袋に入れてくれた荷物を手に、ショップから出た。


 その後は、ギルドに戻って、宿への案内をしてくれる職員さんと向かうことにした。


「アークさん。本当にありがとうございました。明日から教官にいろいろと教えてもらいます。パンと肉串を買っていきますね。買い物まで付き合ってもらって、感謝します。ご主人にもお礼を伝えてください。少し自分に余裕ができたら、また仕事をさせてください」

「うん。わかったよ。おそらく、ルノの能力のことを話せば、父さんも驚くと思う。だから頑張ってな。楽しむんだよ」

 

 ありがとうございました、と深く頭を下げておいた。


 カウンターに呼ばれて、ギルドカードを受け取る。

 そして、夕食はどうするのかと聞かれたので、ここの食堂はどうでしょうと聞けば、美味しいらしい。それなら案内は食事の後にしましょう、と行ってくれた。本当に助かるよ。

 このロッカという街は嫌なこともあったけど、嬉しい事もあった。

 一部の人しか知らないが、とても良い人に恵まれたと思う。それだけが幸せだ。


 でも小さな街なので、いずれは辺境に行くことになるんだろうか。皆そうだ。

 護衛で行った先から戻って来ない人は多い。

 だけど、淡々とこの街で活動していこう。

 だって、アークさんとご主人は、また来てくれと言ってくれた。だから、いずれ護衛としても雇ってほしい。

 あの人たちがいないと、この街にいる意味がないと思ってしまった。


 おっと、料理が来たね。

 これが冒険者セットの大盛りか。

 すごいな、これ。冒険者セットというだけあって、野菜も肉も副菜も山盛りだ。そしてパンは大盛りだと五個付いている。そして、水は無料でお代わりできるんだ。

 

 いただきます、と呟いてから食事を始める。

 うん、旨いな。これ、毎日ここでもいい気がする。冒険者セットは日替わりだと聞いたので、楽しみになりそうだ。


 食うことが楽しみだなんて、考えたこともなかった。

 だから、なんとか生きていける気がする。

 

 しばらく食べ続けて、完食した。旨い水も何度もお代わりしちゃった。最後のいっぱいを飲み干して、席を立つ。料理と引き換えに金は払っているので、気にせず店を出ることにした。


「ごちそうさま」

 

 それだけいって、店を出れば、待っていてくれたよ、案内人の職員さん。

 この人もデカい。

 近くだけど、移動する間に少し話した。やはり元冒険者らしい。怪我して引退し、ギルド職員になったと聞いた。

 俺も気をつけないとな。

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