第30話 開戦
約束の二週間後に、隣国のレアリア王国に戦争を仕掛けた。
移動は土魔法の者が、地面を動かして、歩かずに進んで行く。
そのスピードは馬車よりも馬よりも、ずいぶん早い。
レアリア王国の王都まで、数時間で到着した。
移動中、火の魔術師や風の魔術師が、騎士達の姿を見つけると、瞬時に灰にしていく。
全く、容赦はない。
王都に到着すると、国王陛下の一団と別の一団と二手に分かれた。
国王陛下の一団は、王宮に向かい、もう一つの一団は王都へと向かった。
王都の邸、騎士団の詰め所を、騎士達、貴族が気づく前に、火を放ち風で粉砕していく。
レアリア王国の騎士団と貴族は簡単に排除できた。
王宮に向かった一団は、国王陛下一族を、瞬殺して、慌てて集まってきた、貴族達も魔術で攻めていく。
剣で向かってきた貴族達は、風に吹き飛ばされて、火で焼かれて、あっという間に制圧した。
戦争を始めて、その日の午後には、レアリア王国をヘルティアーマ王国と名付けた。
領地が増えて、農地も増えた。
川に水がある。
収穫を終えた食べ物も多くある。
その日の夜は、ご馳走が並んだ。
あまりに呆気なく、光の魔術師が手を出す程の戦いではなかった。
作戦は、風の魔術師が人を巻き上げ、火の魔術師が炙り殺す。
残酷な戦いだ。
レアリアの王族関係者は、友好国に裏切られて、人の欠片も残さずに灰になってしまったのだ。
幼子もいたのに、そこに、情の欠片もなかった。
ヘルティアーマ王国は、怖い国だと思った。
晩餐会が終わると、貴族達は、食べ物と水瓶を道に置く。すると、土魔法の魔術師が、道を滑るように移動していく。
誰も歩かずに、その隣国へと向かうのだ。
この調子で制圧して、移動していけば、二年と経たずに、数週間後にテスティス王国に到着するだろう。
一日、国一つだ。
万里の道も、魔法で移動してしまう。
国王陛下は、満足げな顔をしていたが、マクシモムは、どうやら戦争は反対のようだ。
国王陛下と喧嘩でもしたのか、頬が赤く腫れていた。
口も利かない。
王家の者として、次期、国王となる者として、そこにいるだけだ。
わたくしとも目を合わせない。
全て、気に入らないのだ。
翌日、ソムニウム王国を攻めに入った。
わたくしは、初めて、光の聖魔法で人を殺した。
ひたすら、輝く白い魔術を人に注ぎ込むと、人は白く輝き始めて、それでも光の魔術を送り込むと、最後は風船が破裂するように、白い塊が、破裂した。
わたくしの白い頬に、赤い血しぶきが飛んできて、わたくしを穢した。
その様子を、マクシモムは見ていた。
わたくしは、汚れた自分を浄化して、赤く染まった頬を綺麗にした。
マクシモムは、わたくしの前から踵を返して、どこかに去って行った。
わたくしは戦いを楽しんでいるけれど、マクシモムは反対している。
わたくしとマクシモムは、結婚を前提にされているが、もしかしたら、マクシモムに完全に嫌われたかもしれない。
マクシモムは、わたくしを否定している。
国王陛下からの命令であったとしても、本当の夫婦にはなれないような気がした。
だが、それでもいい。
わたくしは、王妃になる。
マクシモムの形式的な妻でもいい。
子を成せば、後は自由にすればいい。
さて、わたくしは戦いを楽しもう。
光の魔術師は、もう一つ、人を殺める魔法がある。
それも試してみたい。
病んでいる。
そう、ヘルティアーマ王国の国王陛下も貴族達も、わたくしも血に酔っているのだ。
虫を潰すように、人を消し去っている。
この中で、まともな精神なのは、マクシモムだけだろう。
あっという間に、制圧して、ソムニウム王国は、ヘルティアーマ王国となった。
祝いの席には、マクシモムの姿はなかった。
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