地雷系祓い屋と感知系ホスト3
「それで。……あの手帳見て顔色変えたってことは、君は
「っは、なしてよ……ッ! やめてよ! 誰か助けて……!」
人気のない路地裏で、ゆりあはみれいを壁に追い詰め、その首元に刀を突きつけていた。
誰かに見られれば一瞬で通報ものだが、人もいない上、ゆりあは愛刀である黒刀を自由自在に消したり出したりできるらしいので、特に問題はない。
俺はその様子を変装を解いて――まあウィッグを取っただけだが――見守っていた。必要ないとは思うが、念の為の見張りも兼ねている。感知網を広げていたら、死角からだろうと近づいてきたらわかる。
「だれか……むぐっ!」
「ちょっとお、うるさいよぉ? 防音の結界を張ったから、叫んだって誰も来ないよ? 静かにしてよね〜」
「ひっ……」
完全に悪党のセリフじゃんすかゆりあさん。
「な、なによ防音の結界って……意味わかんないこと言わないでよ……っ」
「えぇ〜、いまさら一般人ヅラするのぉ? 君が普通のヒトならゆりあの手帳見てあーんなに怯えた顔して、逃げようとまでするわけなくない? 嘘がへたくそだな〜」
ここ見て怖くなって逃げようとしたんでしょ――とゆりあが手帳を開いて『S』のところを叩く。
「さ。とりあえず身分証出して。怪我しないうちに」
「……」
「はぁ〜やぁ〜くぅ〜」
(恐喝……)
俺がドン引きしているうちに、ゆりあがさっさとみれいの手から運転免許証を奪い取る。
「ふーん、本名は矢代美玲か……。年は二十二歳。職業は? あ、もちろん表の方ね」
「……キャバ嬢」
「店名は」
「NOIR」
ゆりあがすかさず、空いている左手でスマホを調べる。「……たしかに君と同じ顔のキャバ嬢がいるね〜」
「そ、そうでしょう。わたしは嘘なんてついてないってこれでわかった?」
「んー……」
「ふ……祓除師のことは知ってる。知らないフリをしてごめんなさい」みれいは慌てて言い募る。「わたしも
「まあ納得できない理由じゃないねぇ」
「で、でしょう? あ、あなたなら分かるでしょ? わたしが霊能者って言えるほどの力の持ち主じゃないってこと。妖を祓う方法なんて知らないし、知ってたってわたしみたいな弱い人間には無理よ」
(……たしかに。この女からはゆりあみたいな強さは感じない)
戦えない、弱いというのは嘘じゃないだろう。
ただ――
「……じゃあみれいさんは、妖が見えるだけのただの一般人だってコト?」
「そ、そうよ。そうなの」
「祓除師の存在は知ってるけど、知り合いとかはいないってこと? 界隈に詳しくはないし、なんの力もないって?」
「そ、そう」
「……本当にぃ? にしては選ぶ職業がね〜」
「な、なによ。キャバの何が悪い?」
「悪いってわけじゃないよ? でもなんでキャバクラで働いてるの? 妖、ウジャウジャいるでしょ。夜職は、見える人間には特に精神衛生上よろしくないのに変だな〜って。祓える力があるなら雑魚はどうとでもなるだろうから、わからなくはないけどぉ〜」
「う……」
(う……)
何も考えずホストになった俺に流れ弾が来た。
多分、俺と彼女じゃ唸った理由が違うということも心に来た。
(どうせ田舎者で妖に関する常識も知らずに上京したアホだよ俺は……)
「だっ……だってしょうがないじゃない。お金が手っ取り早くほしいんだもの。……担当のために、手っ取り早く稼がなきゃいけないの。昼職じゃ絶対にできないことでしょ!」
「えー? そんなことないと思うけどぉ。今の時代ヤングセレブなんて星の数ほどいるよ」
「……S級なんていう
「聞き捨てならないな〜。ゆりあたちだって命賭けて戦ってるんだけど?」
「な――なによ。ここに来てるのだって、ただの失踪者と失踪の真相の調査でしょ。そんなんで命賭けてるって言えるわけ」
その言葉に俺は思わず目を見開いて、みれいを見た。
ゆりあも言い返さず、じっ、とみれいを凝視している。
みれいはゆりあの様子に不気味さを感じたらしい。
肩をすくませながら、「な、なに……」とかすれた声を漏らす。
「気づいてないの? 今、語るに落ちたこと」
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