祓い屋助手候補のホスト9
「つっても、低級とはいえ委員会公認の祓い屋に情報回ってないのに、一般人が調査に同行するなんて、普通はないぞ。それって相当、突出してる才能があるってことだと思う。
へえええ~~~……レイヤがね~~~~……ただのDQNだと思ってたけど」
「最後の聞こえてんぞ」
なんでだろう。セイとは何度か会ったことあるのに――なんか、今日初めて、俺に明確に興味を抱いた、という目を向けられたような気がする。
(ただのレイヤくんは眼中にありませんでしたってことかよこの野郎。やっぱり腹立つな……)
「で、セイ、改めてなんだけど。何かわかったら連絡してくれる?」ゆりあが改めて、セイに向き直る。「ただ、くれぐれも深入りはしないように。ちょっと変かなって思ったことを教えてくれればいいから」
「はいっ!」
「……」
人気ホストが、見た目地雷な姫に対してキラッキラな目を向けている。
なんなんだこの異様な光景は。
「あ、あのゆりあさん。俺、一つだけ気になってたことがあるんだけど」
「え? なーに?」
「――『Rose』のナンバーワンの、晴人っているでしょ」
いる。というか、最近会って来たばかりだ。
色恋営業をかけて、見事に姫たちの恋愛感情を手玉に取っていた。
「うちには、あいつに
「うん」
「その盗られた姫、高確率で失踪してるんですよね。盗られたってまでではなくても、晴人と関わってたって馴染みのスカウトから密告があって、いつの間にか担当と連絡が取れなくなったっていう奴、××とか、▲▲とか」
「!」
俺とゆりあは思わず顔を見合わせる。それは今まで俺たちが把握している失踪者のうち、消え方が不自然だと思って覚えておいた名前だった。
こいつの話も、出処はあくまで噂だろうと思われるので、どこまで信憑性があるのかはややあやしいところだが――。
「うーん。じゃあ、また『Rose』の方にも行ってみなきゃな〜」
「だ……、ハッ!」
だな、と言いそうになって、
俺は思わず口を押さえる。
(なんで自然とついていくつもりでいた、俺!?)
いつの間にか、ゆりあの手伝いをする気満々になっていた自分に、愕然とする。
今まで、ゆりあの仕事にかかわるのも、霊感に関係する何かをやるのも、避けてきたのに。
どうして――。
「レイヤ? どした?」
「れいぴ大丈夫〜?」
ゆりあと晴人が怪訝そうな目でこちらを見ている。「な、なんでもない」とあわてて誤魔化す。
(――くそ。バケモノにはなるべく関わりたくないって思ってたはずなのに。ゆりあについてってるうちにいつの間にか……)
俺はどうしたいのだろう。
ホストをやめたいのか続けたいのか。
妖から逃げたいのか対峙したいのか。
――ただ一つわかるのは、俺は昔から
俺はセイを見る。
こいつは蜘蛛の吐いた毒糸(数日で消えるほど弱いが浴びると痛いらしい)を俺の代わりに受け止めてみせた。……そう、俺の代わりに。
――そういうことが、祓い屋には普通にできるものなんだろうか。
セイは俺みたいに、自分に宿った異端の力を、厭うたりしなかったのだろうか。
「とにかく、ありがと〜。報告よろしくね。あでもマンセル組んでるわけではないから上官って訳でもないし、国怪対か所属してる一門に先に報告とかでもいいから」
「了解です」
祓い屋同士の会話をする二人を見て、俺は静かに目を細める。
――なんだか、二人がひどく遠かった。
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