祓い屋助手候補のホスト7



また別の休日。

 俺はゆりあに連れられて、他のホストクラブに向かっていた。

 目的が聞き込み調査などは知れているので、


今度訪れるのは[CRIMSONMoon]。

【AGELESS】がチャラ系陽キャタイプのイケメンが多いホストクラブならば、こちらは知的・クール・ドSといったキャラのホストが多いホストクラブだ。

 華やかさを追求している店構えの【AGELESS】とは違い、[CRIMSONMoon]は店の外観も内装もシックな印象である。


(んで……)


 この店不動のナンバーワンは、あいつ。

 長身の黒髪に紫色のカラコンをはめた瞳が特徴的な男。――セイ。


 晴人と同じように、その身に常人とは違うオーラをまとっている。

ゆりあが言うところの、気配が強い・・・・・というやつだ。


「おお~、評判通りイケメンだねぇ~! クールイケメンって謳ってるだけあるじゃん♡」

「なんだよゆりあ、俺の前で浮気? 俺はサブだって作ってほしくないのに」

「やだ~、浮気じゃないよぉ? れいぴが一番に決まってるじゃぁん♡」


 と、こっちはこっちで軽い茶番をはさみつつ――別にいつもやってるやりとりなので、茶番というわけでもないが――俺は接客中のセイを見て、チッと心の中で舌を打つ。


(気に食わん……)


 というのも――セイは俺よりやや(あくまで、やや・・だ。ここは大切なので傍点を振っておく)年間売り上げが多いのだ。


 ホストなんてどいつもこいつもおんなじような根っこ陰キャばっかなのに、クール系ぶりやがって。

ぶっちゃけ俺はあいつを目の敵にしている。


 

 ――まあ、俺の私怨はともかくとして。

『Rose』の時と同じく、ゆりあはテーブルについたホストたちから、順調に話を引き出していった。俺もまあ一応、情報収集に協力する。


 何せ俺もホストのあいだじゃ顔を知られている方だ。別に俺だけが有名なんじゃなく、俺のような億プレーヤーはだいたい新人たちの憧れに据えられることが多いという話だが。

他のホストクラブに行けば、「偵察に来たのか」という目を向けられることはあるものの、だいたいは「レイヤくんが来ている!」という顔をされる。――これは別に自惚れでもなんでもなく、実際に羨望の眼差しを向けられるのだ。

だからこそ、俺が話の輪に入ると、一気にホストらの口も軽くなる。

 

 ゆりあは入れ替わり立ちかわりするヘルプたちからいろいろと話を聞けてホクホク、といった様子である。


「さすがれいぴ♡ れいぴがいるとみんないろいろ喋ってくれるよねぇ」

「まーな。……てか、もしかしてゆりあ、俺を聞き取りに同行させたのって、妖センサーとしてだけじゃなくて、そういう理由もあったわけ?」

「イケメンって男女問わず人の口を軽くさせることもできるんだよね~。お顔って偉大♡」

「……ああ、そう……」


 こういうところ、ゆりあは本当にちゃっかりしている。

 好きなように俺を利用しているあたり、わりとゆりあがイイ性格していることは最近だいぶわかってきたけれども――なんというか俺本当にゆりあの推し・・で合ってる? と思うことも増えた。


(まあ費用ぜんぶゆりあ持ちだからこの瞬間も貢がれてることになるんだろうけど……他店のホスト見るのも勉強ではあるし……)


 それに、あさひのことしかり、妖が人の振りして、グループ系列のホストクラブに潜んでる可能性が高いってことは、自分に危害が及ぶこともあるということ。

 ゆりあに連れまわされているのもリスク管理のためと思えば……。


「――ただまあ、ここでもやっぱり失踪者は出てるみたいだね。ホストも客も、見かけなくなった……って人がけっこういるみたい。

 れいぴ、『Rose』の時みたく、気になることってない?」

「んー、そうだな。まあ、晴人もそうだったけど、セイもそこそこオーラがある。あと気になることと言えば……」 

「お。なーに?」

「ここの店、空気が綺麗だよな。物理的な話じゃなくて、淀んでないって言うか」

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