祓い屋助手候補のホスト5
「!」
聞き込み。
つまりは――仕事の。
ゆりあははしゃいだ表情を引っ込め、背中をソファの背にもたれさせる。
「……この『Rose』界隈でもホストやその客の失踪事件が増えてる。【AGELESS】と同じようにね。
とはいえまだ、失踪したやつらは、
「……人皮マーケットはインフィニス系列のクラブにある可能性が高いってこと?」
「ん〜。高い、かはビミョーかな。かもしれない、ってレベルだよ」
「そっか……」
とはいえ、
インフィニス――ひいては【AGELESS】も、なにかしら害悪アイテムの売り買いに関わりがあるのかもしれない。
(うちの周りとか、マジで妖のたまり場だしな)
知性を持っていそうな奴もたまにうろうろしている。俺は死ぬ気でスルーしていたし、キモいものを記憶に留めておきたくなかったのであまり覚えてもいないが。
妖が【AGELESS】の中にいる『誰か』と、なにかしらの取引をしていたとしても気づかなかっただろう。――死ぬ気で見ないふりをしていたとも言えるが。
(……だったら俺がもっと、あさひの異変に早く気がついてたら、ユキヤたちも死なずにすんだのかも)
そこまで考えて、ハッとする。
……い、いや、違う。俺は悪くない。
だって、気づいてたとしても俺に何ができた? 単に霊感が強いだけの俺が。
「こんにちは〜! アキっていいます! ……ってうわ!? 【AGELESS】のレイヤくんだ!? なんで!?」
すると。
ヘルプ(担当ホストが席を離れている時に代わりに接客をするなど、サポートをするホストのこと)のホストがテーブルにやってきたかと思えば、俺の顔を見て素っ頓狂な悲鳴を上げた。まあ気持ちはわかるが小うるさい奴だな。
「ほ、本物だ〜! 3億のプレーヤーに会えて嬉しいです!」
「わあ〜、れいぴやっぱり同業者にも有名なんだぁ」
「はは……ありがとな」
……まあ持て囃されて悪い気はしないが。
とりあえず要所要所で会話に混ざりつつ、ゆりあはアキの話を聞いていたが、ゆりあは見事にアキから情報を引き出していた。
「だからミクが疾走したの、僕は変だと思ってたんですよねぇ。景気良さそうだったし、売り掛け飛ぶような子には見えなかったんだけど……」
「そーなんだぁ。不自然だねぇ」
相手が新人であろうことを差し引いても、話術が仕事に必須なホストを相手に、ゆりあはさっさと情報を抜いていく。
俺は余裕の姿勢でニコニコ会話に混ざりながら、若干引いていた。――やり手の刑事かよ。
「あー、晴人さんも前、ミツキってのに切られちゃったんだよ。まあ別にエースってわけじゃなかったみたいだから、ほぼナンバーワンにはノーダメらしいけど」(ヘルプA)
「ユリって姫が、このままじゃ売り掛け払えない〜って出稼ぎ行ったまま戻ってこないんだよな。それで音也が売り掛け払えなくて飛んだ……あっ、これは内緒で! あんまりベラベラ喋ると系列店とはいえ店長に怒られる」(ヘルプB)
その後も代わる代わるテーブルについたヘルプから話を聞いていくゆりあ。にしてもこいつら、一旦口を開かせたら喋る喋る……。大丈夫か、『Rose』の危機管理体制。
(でもちょっと状況が【
『Rose』ではどちらかというと客の失踪が目立つようだった。客のほうが、ホストよりも数を減らしている。
ホストに不自然な失踪者はあまりいないという。客に掛けを飛ばれて借金が返せず、逃げたホストはいたらしいが――まあそういうやつは少なくないし、いずれ店の人間に捕獲されるものだ。
「ねえれいぴ」
「ん? 何、ゆりあ」
ヘルプがいなくなったタイミングでゆりあが再び耳打ちしてくる。「――ここ、変な気配とか、持ってるやついない?」
俺はぱっとゆりあを見た。
……なるほど、俺をここに連れてきたのは、それを聞くためでもあったんだろう。
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