夏祭り

雪鳥大福(初心者:勉強中)

夏祭り

夏祭り

強い日差しが降り注ぎ熱風が体に叩きつけられる。

腕時計を見ると午後3時半だった。

汗が目に入り顔を拭う。

幼なじみの未菜との集合まであと30分もある。

この高校最後の夏は勉強ばかりだった。

受験生となった今年は、去年とは違い教室の空気が張り詰めている。この夏が終わると本格的に僕も含めて皆が受験勉強に集中するだろう。その前に幼なじみだった未菜と高校最後の夏の思い出を作りたかったのかもしれない。


「お待たせ。待たせたかな?」


後ろから声をかけられて少し驚いたが振り向いて

 

「いや、全然待ってないよ。未菜。」


「ふふ、なら良かった。そういえばこの浴衣似合ってるかな?」


未菜のことをよく見ると、いつも見ている制服姿ではなくて蝶の模様が入った浴衣だった。

未菜からは、いつもと違い不思議な色気が漂っていて熱で熱くなった顔がさらに熱くなりそうだった。


「とても似合ってるよ!」


「良かった〜。浴衣を着るのは小学生の頃以来だったから似合ってるか心配だったんだ。」


未菜はそう言うと僕の方を向いて嬉しそうに笑った。

少し照れくさくて目を背けてしまった。


「夏祭り楽しみだね。翔太。」


「そうだね、未菜」


未菜が夏祭りを楽しみにしてて本当に良かった。

僕が誘ったから仕方なく来ていたのかもという嫌な想像ばっかりしてしまっていたから安心した。


「未菜、今日はありがとうね。夏祭りに一緒に来てくれて。」


「気にしないでよ。私達幼なじみなんだから。」


「あ、そうだ。そろそろ向かい始めたら開催時刻くらいに着くはずだから行こうか。」


「うん!夏祭り楽しもうね!」


僕と未菜はそう話しながら祭りが開催される場所である神社前の商店街に向かった。


―――――――――――――――――――――

「「うわぁ!」」


商店街に屋台が沢山並んでいて驚いて声を上げてしまった。

屋台からは焼きそばのソースの匂いなどが漂って来てお腹がすいてきた。

未菜の方を見てみると周りを見渡している未菜の姿が見えた。


「翔太、どこからまわるの?」


「えっと、未菜の行きたいところからでいいよ。」


「ありがと!翔太!じゃありんご飴の屋台に行こう!」


「わかったよ。未菜」


りんご飴の屋台は、小さな子供達が何人か並んでいるだけでそんなに時間はかからなそうだった。

何分かを未菜と話ながらまつと、


「次のお客さーん!どうぞー!」


「あ、はーい!りんご飴の小さい方を2つください!」


「はーい!600円だよ!」


未菜が店主に600円を渡して店主からりんご飴を受け取った。


「はい、翔太の分。」


「ありがとう。未菜」


そう離して僕は300円を未菜に渡した。


「翔太、こっちに座って食べよう!」


「うん。わかった」


僕は未菜の座った隣に座りりんご飴を食べ始めた。


「美味しい!」


りんご飴を初めて食べた僕は思わず声を上げてしまった。

未菜の方を見てみると美味しそうにりんご飴を食べていた。

僕はこんな時間がずっと続けばいいのにという叶わない願いを頭に浮かべてしまった。


「どうしたの?翔太、具合でも悪いの?」


「大丈夫だよ。未菜、少し願い事を考えてしまっていただけだよ。」


大学は未菜とは違う大学に進学する予定だ。

未菜は偏差値が高い国立大学を、僕は偏差値が普通の私立を受ける予定なのだ。

僕は未菜と同じ大学に行きたかったが偏差値が足りないので少し諦め気味だ。


「翔太……大学生になったら会えなくなるとか考えてるの?」


「……そうだよ」


「私達幼なじみだよ!もう会えないって事はないんだよ!」


「……ごめん未菜。今日は楽しまなくちゃね。」


「うん!そうだよ!高校最後の夏祭りくらい明るくいこうよ!」


「わかったよ。じゃあ次はどこ行こうか?」


「うーん、次は射的しようよ!」


「いいね!」


―――――――――――――――――――――

『まもなく8時30分です。花火を打ち上げますので河川敷の方には向かわないでください。』


……もうすぐ夏祭りが終わってしまう。

この花火が夏祭りの最後のプログラムだ。

夏祭り中に未菜と過ごして決意をした。

僕は未菜が好きだということを伝えようと思う。


「翔太〜、花火一緒にみようよ!」


「うん、一緒に見ようよ。未菜。」


そう言って僕らは神社の階段を昇っていった。

神社は暗く他には誰もいないみたいだった。


「未菜、ここで見ようよ」


「いいね!ここで見よう!」


そう言って僕たちは、石でできた柵に腕を乗せた。


『まもなく、花火が打ち上げられます。』


「もうそろそろだね〜」


「そうだね」


僕たちが河川敷の方を見ていると、

ヒューという音と共に夜の闇を切り裂くような一筋の光が打ち上がってきた。

バン!という力強い音とともに暗い夜空に大輪を咲かせた。

夜空の花は散りまた新たなが咲いた……


 

数分ほど続いていただろうか。

僕たちは無言で花火を見続けていた。


「よし」と心の中で呟き未菜に声をかけた。


「ねぇ、未菜」


「どうしたの?翔太」


「暗咲未菜!ずっとあなたのことが大好きでした!

付き合ってください!」




「……はい。私も中川翔太のことがずっと好きでした。

これからもよろしくね!」


花火はそんな僕たちを祝福するかのように今までで1番大きな大輪を夜空に咲かしていた。

 

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