白の果て、君のもとへ
@senbazuru
第1話「白の世界」
どこまでも、白かった。
空も地面も、境界さえもない。
足元が曖昧だ。
白が溶けて、世界をのみ込んでいく。
寒さもない。風もない。音もない。
まるですべてが、止まってしまったみたいだ。
――男は、そこで目を覚ました。
立っていたのか、倒れていたのかも分からない。
気がつけば、もう歩いていた。
「……ここは……?」
声を出しても、返事はない。
音が、白に吸い込まれていく。
世界そのものが、音を拒んでいる。
歩いても歩いても、何も変わらない。
地平線も、影も、何もない。
ただ、白いだけの世界。
「誰か……いないのか! おい、誰かッ!」
叫びは空気に溶け、跡形もなく消えた。
声が届く感覚すら、どこにもない。
「なんなんだよ……ここ……!」
焦りが胸を締めつける。
足が勝手に動いた。男は走る。
どれくらい走ったのかも分からない。
時間の感覚が、消えていた。
息が荒くなり、ついに膝をつく。
汗は出ていないのに、体がやけに重い。
「……夢か……?」
「……それとも、死んだ……?」
違う。
胸の奥が知っている。――これは、夢じゃない。
白の中で、男はゆっくりと目を閉じた。
そして、確信した。
自分は、この場所を知っている。
まだ、その意味を思い出せていないだけだ。
――これは、終わりじゃない。
これは、すべての始まりだった。
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