第14話 帰郷
ちほーからセントラルへの帰路は、往路と異なり隣に誰もいないから妙に静かで、その静寂さが少し怖いくらいだった。
往路で運転してくれたフィンチは今頃何してるんだろう。わたしは選ばれなくて彼女が選ばれた意図は何なんだ。あれは、ちょっと前にやらかして事務に左遷された後の復帰だろう。なんでわたしに遅れる所があるというのだろうか。
・・・。これはよくないな。彼女の射撃技術は確かだし、彼女が抜ければわたしが入れるって話でもないだろう。
わたしはただ征討隊に入れなかったのが残念なだけだ。そう思うことにした。
無言で車を動かしているとまるで周りに無数のセルリアンがいるみたいだ。いや・・・この目はわたしを冷たい目で見るハンターの同僚達の目といったほうが近いかもしれない。わたしは鈍感な「たち」であると自分でも思っているが、それでも、それなりに周りから変わった扱いを受けていたことはわかってた。でも。ここまでだとは思っていなかった。
「母さん?」
「っ!!!」
隣を見ると、オオモズが車と並走していた。頭の翼から放出されるサンドスター粒子が温かい。緑色の光の粒がわたしのほほを撫でるのを感じた。
「ふぅ・・・着陸〜」
オオモズは助手席に座った。相変わらず凄い飛行技術だね、と流し目を通して褒めると照れくさそうに笑う。
「で、なんで来たの?」
わたしはなるべく今までの感傷を表に出さないように言った。これでもわたしは母親だ。
「母さんの凱旋って聞いたらさ、そりゃ迎えにいかなきゃ。って。」
「凱旋ってほど今回は活躍できてないよ。」
「そうかなぁ?今までと比べたら確かにしょぼいかもしれないけどさ。」
母さんは今まで行く先々で凄い厄介なやつを倒してきた。帝王セルリアンにティンダロスの森の主に、叛逆の輩。確かにこの豪華なメンツが基準になればたいていのセルリアンは雑魚みたいなもんか。
「でも、やばいセルリアンは出てないってことでしょ。なら、良いことじゃない。」
「うん。そう思うことにするよ。」
母親のこういう姿は見たくなかった。母は暗い面持ちで前を眺めていた。まるで子供みたいだ。
「ねぇ。征討隊に入れなかったの、そんなに残念?」
母は何も言わなかった。何か考えてる瞳を正面に向けた。
「征討隊に入れなかったことが辛いんじゃないと思う。・・・なんて言うのかな・・・・わたしね、みんなから思ったより頼りないとか、情けないとか・・・・・・っ・・・弱いって。思われてるみたい・・・」
「母さんが弱いんだったら、僕なんてハンターやれてないと思うよ。」
「でも、みんなは、そう思ってるみたいなんだ。」
「それは、母さんの活躍がいつまでも評価されないから?」
「そうかもしれない・・・」
母さんが弱いなんてことはない。僕が身内だから多少甘い評価を下していることを加味してもだ。今までの活躍が評価されないのはそれぞれ複雑な事情が関わっていて、母を評価すると、色々臭い蓋を開かないといけなくなるからだ。母に問題があるわけじゃない。
「ねぇ・・・母さん。」
「・・・」
「母さんは、僕にとっては凄い頼りがいがあって、強くて、・・・それじゃ、だめかな?」
セントラルの城壁が見えてきた。
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