第27話 エピローグ

 デジタル広告に、SNS。オフィス内のレイアウトだって、見栄えのするように整えた。宣伝になりそうな事はやったつもりだ。


 直接営業をかけようとして、逆に営業をされてしまったりもしたが、それでもめげなかった。


 しかし、未だ問い合わせはない。俺は今、猛烈に焦っている。何故なら今日が期限の日だからだ。


 稼働率50%どころか、1件の利用もない。それどころか、1件の問い合わせすらない。これはまずい。非常にまずい。


 俺が焦っているそばで、神宮寺は相変わらずどこ吹く風。無表情にカタカタとパソコンを打つ。


「神宮寺くんさぁ。もうちょっと焦ったら?」

「いや。焦っても、どうしようもないじゃないですか。無理だったんですから」

「それはそうだけど。何か、これからのことで社長に提案できることを……」


 そんな感じで言い合っているうちに、社長から呼び出しがきた。


「どうだ? 新事業推進部の方は?」

「はぁ。あの……」


 背中をつつっと冷たい汗が流れる。


「報告書が届いていないようだが?」

「報告書……? 報告書ですか?」


 掌がぐっしょりと汗で濡れる。社長の顔をまともに見られない。視線は、ずっと爪先を捉えたままだ。


「どうだ、ひかる?」

「今のところ、1件の問い合わせもないね。2ヶ月で50%の稼働率なんて無理に決まってるじゃないか」


 神宮寺の不貞腐れた声に、俺は顔を上げた。


「ちょっと神宮寺君。社長になんて事を……」


 焦って彼を止めようとスーツの袖を引っ張る。


「父さんは結果を急ぎすぎる。もう少し長い目で見てくれなきゃ」

「え?」


 神宮寺の言葉が、さらりと耳を通過していった。


「……父さん?」


 訝しげに呟いた俺に、神宮寺はしれっと言う。


「ああ。社長は僕の父です」

「父……? え? でも、名前……?」

「神宮寺は母の旧姓です。社内での煩わしい事を避けるために、母方の名前を名乗っています」

「え? ええ〜〜!!」


 俺の絶叫が社長室に響き渡った。


 そんな俺を余所に、神宮寺と社長は淡々と話を進める。


「まぁさ、レンタルオフィスはもう少し待ってよ。それよりもさ、次はレンタサイクルがくると思うんだよね」

「なんだレンタサイクルとは?」

「貸自転車だよ。絶対需要あるって」

「そうなのか? まぁ、好きにやってみろ」


 親子の会話を口をポカンと開けて聞いていると、神宮寺が俺に向き直った。


「では、次はレンタサイクル事業をお願いします。田中部長」

「え? え? ええ〜〜!!!!」


 俺の絶叫が再び社長室に響き渡った。






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『レンタルオフィス、借りて下さい』、完結しました☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


次ページからは、『下着泥棒にご注意!』をお届けします。

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