第三部 新しいクラス
十二刀目 お汁粉
朝。俺は目を擦って起き上がる。のそのそと立ち上がって居間へと向かう。
「おはよぉ、とうわ……」
「まず、顔洗って来い」
「ん〜……」
俺はぽてぽてと歩いて洗面所まで向かう。パシャパシャと水を顔にかけて洗う。……目、覚めたかも。着替えて少しすると、カナさんが起きてきた。また更に少しすると、要さんと勝人さんも来てくれた。
「よっすー。入学式の前に来てやったぜ」
カナさんはいつもよりテンションが高い。
「そう、今日はヤマん入学式!行くんが楽しみやな!一眼レフも買うといたばい!」
要さんはカナさんをバカにするように笑う。
「親バカ……」
カナさんは要さんの言葉に反応する。
「なんて言うた、要?」
「親バカ」
「よし、表出れ。タイマンや」
「おし、やったる」
「もー!喧嘩とかしないでよってばー!」
勝人さんは手をぱたぱたと体の横で鳥のように動かす。
……可愛い。と、背後から冬和の声が聞こえた。
「全く……騒がしいですよ、お二人とも。お汁粉作りましたよ。食べないんですか?」
「「食べる!」」
二人は瞬時に戦闘を終わらせ、冬和のところへ飛んでいく。
「食べるんなら手を洗ってきてください」
「「わかった!」」
二人は手を洗いに行くが、あっちでもどっちが先に手を洗うかで争ってる。……喧嘩好きだなあ。
「ほら、早くしないとお汁粉食べちゃいますよ。虫拳でもして順番に手を洗う方が早いんじゃないですか」
楽しそうだなあ。全員揃ってお汁粉を食べていると、不意に要さんが口を開く。
「あ、入学式の挨拶、お前にやってもらうからな」
「………ほええええ?」
「いや、だから入学式の挨拶やれって」
「もっと早く言うべきでしょーよ!なに入学式当日に言ってるんですかっ!」
「忘れてた」
やばいって。なんでそんなことをそんなに遅くなってから言うんだ。頭少しおかしいのでは……?
いや、本当に困る。どうしようか……。
「なんで俺なんですかっ」
「魔法が……強いから?」
その言葉を聞いて思い出したのは、勝人さんが魔術の練習の時に教えてくれたこと。
『大和くんは、魔法、強いよね。でも、代償が大きすぎるせいで、あまり自分の魔法を使うことが無いと思うの。だから、実際には、大和くんはこっちの世界に入りたての、ぴっかぴかの新入りちゃんなわけ。無詠唱魔法が何故か使えただけで、大和くんの無詠唱は一般人が使う詠唱魔法よりも威力は無いし弱いんだからね。あんまり自分を過大評価しないように』
ぴっかぴかの新入り。
まあ、要するに自惚れるなって話……じゃなかったんですかぁ?
「冬和、手伝ってぇ」
「なんで僕がお前のためにやんなきゃいけないんだよ……」
冬和はブツブツ文句を言いながらも、結局は手伝ってくれた。
「それじゃ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
「また後でな」
俺は四人に見送られて家を出る。勝人さんと要さんは後ほど学校まで来るらしい。俺は少し緊張しながらも、ワクワクしながら学校へ向かった。
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