二刀目 ……魔法?
俺は、この後どうすればいいかがわからなかった。
その前に、今目の前で起きていることが理解できていないからだ。
ただ、ずっと突っ立っているわけにはいかないから、とりあえずさっきまで那津の家があった方に向かって歩く。
家には帰りたくないし。
何故さっきまであったところに向けて歩くのかというと、青木商店街は、位置している場所は同じだったからだ。
木造になっていただけ。
ということは、他の家も元の場所にあるんじゃないかと思って。
少し歩いていると、見覚えのある形が見えてきた。
ちゃんと、那津の家だ。
表札には「染木」と書いてある。
俺は玄関の扉をトントンと叩く。
「那津ー!」
少しすると、扉が開き、那津が少し怒ったような顔で現れる。
「何よ、大和。騒々しいわね」
那津は俺の幼馴染。
いつも何かと助けてくれるから今日もとりあえずここに来たってわけだ。
「少し、聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「うん。今って何年何月何日?」
「大和、何を変なこと言ってるの……?」
少し首を傾げた那津だったけれど、しっかりと質問に答えてくれる。
那津を見ている限り嘘はついてなさそうだ。
日付も、年もさっきまでいた世界と変わらない。
違うのは外観だけなのかもしれない。
「そっか。那津、俺と那津の関係性は?」
那津はまたも首を傾げたけれど、しっかりと答えてくれる。こういうところが人に好かれるところなんだろうけど。
話を聞いてみると、俺が知っている通り、那津は幼馴染で、保育園、小学校は同じところに通っていて、中学校も同じ学校に行く予定らしい。
ただ、その後に続いた言葉に、俺は驚いた。
「小学校の頃はずっと、中学になったら自分の魔法がわかるから、一緒に見せ合いっこしようねって話してたわよね」
「……魔法?」
「そうよ。忘れたの?」
「ううん、忘れてないよ。どんな魔法になるんだろうね」
俺は慌てて手をブンブンと振って否定する。
那津は少し首を傾げたようにも見えたけど、少し微笑む。
「まあ、どんな魔法になったとしてもこれから一生付き合うことになる魔法だし、あんまり後ろ向きな気持ちで応えちゃダメよ」
「……そう、だね」
この世界では俺に常識は通用しないようだった。
でも、その非常識な感覚が、何だか新鮮で、とても楽しかった。
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