いつもの仲間と異世界道中!

ミドリムシ

プロローグ


それは、いつも通りの何気ない一日から始まった。


高校2年生の河内幸樹かわうち こうき。見た目は中肉中背の平凡なオタク。ラノベやゲームを好む、ごく普通の高校生だ。

そして彼には、よく一緒に行動する4人の仲間がいる。


1人目は伊狩陽平いかり ようへい。やや小柄で、容姿は"上の下"といったところ。しっかり者で、家が近いことから昔から仲が良い。

2人目は宮田武蔵みやた むさし。眼鏡をかけた地味目な風貌で、身長は本人曰く160cmらしいが、確証はない。ラノベやゲームの話題で幸樹とよく盛り上がっている。

3人目は佐野勇人さの ゆうと。幸樹より少し背が高く、これまた平凡な見た目のゲーマー。寝癖がひどく、学校内でも有名だ。

4人目は熊崎斗哉くまざき とうや。眼鏡をかけ、幸樹と同じくらいの背丈。オタク仲間として、宮田と共に話が尽きない存在だ。


平凡な見た目の5人だが、自分たちは中身で勝負していると自負していた。陽平、宮田、佐野とは小学校からの仲で、斗哉は高校に入ってからの友人だ。

その日も、いつものように休み時間を過ごしていた。


「なあ宮田、次の授業って何だっけ?」

「現代文だよ」

「マジかー、だる…」


幸樹のぼやきに、陽平が頷きつつ言った。


「まあ気持ちは分かるけどさ。あと1時間で給食だぞ」

「分かってるけど、あえて言いたい時ってあるだろ。てか佐野、また寝てるな。どうせ昨夜も夜更かしだろ」


視線を向けると、案の定佐野は机に突っ伏していた。


「昨日、大事なイベントがあったらしいよ。それに『俺の睡眠を邪魔する者は誰であろうと許さない』って言いながら寝てたし」


斗哉が淡々と告げる。幸樹は笑いながら肩をすくめた。


「朝から眠そうだったもんな。まあしかし……ホント毎日が平和すぎて退屈だよな。異世界召喚とかされねーかな」

「そんなのあるわけないじゃん。妄想にもほどがある」


陽平が冷静にツッコむと、宮田と斗哉も揃ってうなずく。


「だよなー……」


幸樹はため息をついたが、どこか未練がましい表情を浮かべていた。

──その時だった。

突然、教室の床が光り出した。

目を開けていられないほどの強烈な光が教室を包み込む。


「うおっ!?マジで!?」


幸樹たちは思わず目を閉じ、その眩しさに身を任せるしかなかった。


(おおお……これ、よくラノベで読んでる展開だ!)

(うそだろ!?何が起こってる!?)

(まさかさっきの俺の発言がフラグだった!?)

(Zzz……)

(あー、フラグ立ったな。何か準備いるかな……)


目を開けると、そこは真っ白な空間。

先ほどまでいた2年C組の生徒32人が、揃ってそこに立っていた。


「……マジで異世界召喚!?」


幸樹は興奮気味に叫び、仲間に向かって言うと、3人は頷いたが、1人はまだ夢の中だった。


「これ、起こした方が──」


その言葉を遮るように、どこからともなく声が響いた。


『32名の諸君』

『すまない、時間がないため、皆に直接語りかけている。頭に響くこの声が、私の意思だ』


老いたような、若いような、不思議な響きの声だった。

幸樹はその響きに胸を高鳴らせていた。


『私は“神”と呼ばれる存在。そして君たちは、今いた世界とは異なる世界……“ディファルド”という場所へ行くこととなった。そこは剣と魔法、魔物が跋扈ばっこする世界である。死と隣り合わせの地に、君たちを送らねばならない』

『しかし、ただ送り込むだけではない。君たちには力を与える。スキルと呼ばれる特殊能力だ。中でも“鑑定”のスキルは全員に与えよう。その他のスキルは、君たちの魂の器と願望によって決まる』

ざわめく生徒たち。だが言葉は出ない。

『声が出ないのは、私が話を続けるためにそうした。君たちが召喚されるのは、ラスウェル王国の王城だ。すぐに命の危険があるような場所ではないから安心してほしい』


スキル──その言葉に、全員が内心で自らの願望を思い浮かべ始めていた。


(やっぱ経験値が倍になるスキルとか、成長系がいいよな)

(錬金とかやってみたいな……料理の腕も活かせるか?)

(調教スキル!テイマーになるためには絶対それ!)

(神を殺す力……いや、隠密系か?)

(特にないけど……守れるスキルがいいかな)


『願いは把握した。だが、全てが叶うわけではないことを理解してくれ。力の授けは、それぞれの魂の器に応じたものだ』


神の声がそう告げると、生徒たちは神妙な面持ちで頷いた。


『それでは、そろそろ時間だ。困難もあるだろうが、どうか生き抜いてくれ。君たちの旅路に、幸多からんことを──』


その言葉とともに、再び光が生徒たちを包み込む。

光が収まった時、彼らは見知らぬ、豪奢な洋風の城の中に立っていた。



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