⑦ SIDE: ユウ

「怪物は、どうなったの?」

 私は友人に聞いた。

「なに?映画の話?」

 友人は心底呆れたという顔をして私を見た。

「え、もしかして寝てて観てなかったの!?もったいない!なかなか面白かったのに〜!」

 それを聞いて、ようやく思い出した。そうだ、今日は卒業式の前夜祭。学校の体育館のスクリーンに、怪獣映画を写していたのだ。それを観ながら寝落ちしたから、あんな夢を見たのだろう。


「あ!品川先生寝てるじゃん!」

 友人は、体育館の壁を背に俯いている先生を指さした。私は、懐かしい気持ちに駆られながら、友人と共に彼の元へ近づいた。夢では話したけれど、現実では、もう長いこと話していなかった。


「う、うぅ、ううぅ……」

 近づいてみると、品川先生は膝を抱えながら、情けなく呻いていた。私たちは、可哀想なので起こしてあげようと肩を揺すった。

「先生、品川先生!起きてください!」

「いやだ……やめてくれ……たのむ……」

 なかなか起きない。私たちは顔を見合わせ、耳元で叫んだ。

「先生!!!!」

 肩がビクッとなって、先生は目を見開いた。

「うわあ!なんだ君たちか!」

「映画、もう終わっちゃいましたよ」

 友人が残念そうに言った。

「そ、そうか……映画……そうだったな……」

 先生は頭の後ろをかきながら、左上を見上げた。

「もー、先生まで寝ぼけてるの?私たちもう行きますからね!」

 友人がそう言うと、品川先生は片手を振って言った。

「ああ、じゃあまた明日」


 その場を去ろうとしたら、私のポケットのスマホが振動した。誰かからメッセージが届いたようだ。

 画面を開くと、弟からだった。

「卒業おめでとう」

 私はすぐ送り返した。

「まだ早いよ」

 それから、少し迷ってもう一言付け加えた。

「ありがとう」

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