第2話 知りたいんでしょう?

「この組織が主にやってることって、何なんだ?」



「ああ? なんだそりゃ?」




 扉を閉めかけたところで振り向いたカシワバラが間の抜けた声を出す。半身振り向いた姿勢なので、こちらから見える顔は機械の面で表情がない。




「例えばこの『研究所ラボ』で作った『強化ブーステッド』部品を売り捌いてる、とか」



「ああ、商売の話か。まあ、そうだ、それもあるな」



「他にもあるのか?」



「まあ、なんだ。いずれお前にも手伝ってもらわあ。そん時にわかるだろうよ」




 確かに組織の下っ端であるおれに、全体像を逐一話す必要もないだろう。




 ただ、何か、はぐらかされた気がした。




亡霊ゴースト』がこの組織を狙う理由を探れたら、と思っていた。『亡霊』本人に考えろ、と言われたからだ。組織を抜けろ、とも。




 やりすぎた『強化』は『亡霊』に憑り殺される。




『亡霊』は憑り殺しにやってきた。




 ということは、この組織は何かを『やりすぎている』ということだ。




 おれは『非強化アンブーステッド』が少しでも生きやすくなればいいと思っている。




『亡霊』はそうも言った。




 それが目的だと。




 つまり『亡霊』にとっての『やりすぎている』とは『非強化』の生活が脅かされるものを指しているように思えた。




 思えば『亡霊』対策の案山子として連れてこられたおれに、この組織がどういう種類の犯罪を取り仕切り、何で財を成しているのかなどという知識はなかった。




「いずれわかりますよ」




 カシワバラでは出せない、慇懃とした言葉使いが入室してきたことに驚いた。カシワバラと入れ替わりに姿を表したのは、おれとそれほど歳の変わらないガキだった。




「てめえ……ミナト」



「カシワバラさんの下で働けば、いずれわかりす。おれもそうでしたから」



「カシさんの下で働けば、てめえみたいに話し方まで慇懃な野郎になれるって?」



「組織についてです。知りたいんでしょう?」




 嫌味も通じないミナトに辟易しつつ、おれはベッドから身を起こした。おれの背後で何本ものケーブルが外れる音がした。




「ああ、知りたいね。てめえが何考えてるのかも含めて」




 ミナトは何も言わずに背を向けた。だが、それが答えだと思った。




『亡霊』がこの組織を狙う理由と、ミナトが『強化』になってこの組織に食い込もうとした理由は、どこかが、あるいは何かが、繋がっている。理屈ではなく直感で、おれはそう感じていた。




 もらった命を、おれはおれのやりたいように使う。おれのやりたいことに付き合う義務が、あんたにはある。




 プロフェッサー・グレイの受け売りの言葉を、おれの言葉と思っておれを慕ったミナトの言葉。




 ミナトが言う、おれのやりたいこと。




 それはただ『強化』になって終わりではなく、この組織で『強化』になって始まるのではないか。




 全てを明らかにするためには、いまは付いていく以外になかった。

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