第21話『ネクスト』

「おれが狙撃したのは『強化ブーステッド』だが、お前の仲間なのか?」




 仲間。




 そう問われて、返す言葉がなかった。仲間、という意識はない。ミナトによって持ち込まれた厄介事の果てにいまがある。『強化』されることを望んでいたわけでもない。だから組織の長であるオヤジに、『強化』されたことを感謝しているはずもない。




「仲間、というのとは違う。ただ情はある。目の前で一方的に撃ち殺されて行くやつを助け出す力があるなら、それを使えとおれは育てられた」



「いい親だな、こんな時代に」



「この時代だからだろ。『非強化アンブーステッド』はそうしてしぶとく、持てる強さを合わせて生きなけりゃ、生きていくことさえできやしない」




 おれに突き付けられた黒い孔がわずかに揺れた。ほんの数ミリの微動だが、所持者の動揺を伝えるには十分な揺れだった。




「お前、下層の『非強化』だったのか?」



「つい最近まで」



「お前を育てた親は、グレイか?」



「なんであんたがジジイを知ってる?」



「古い付き合いがあった。『戦争』の頃から」




 ジジイが言っていた。『戦争』の頃に『非強化』を守って戦った拳銃使いガンスリンガー刀剣使いソードダンサーの話。




 だからおれはこの亡霊ゴーストに憧れを抱いたのだ。『戦争』を生き抜き、15年後に『強化』七同盟を屠ってみせた、『強化』でも『非強化』でもない存在に。




 ジジイが言っていた、『ネクスト』という存在に。




「おれがあんたの馴染みのジジイに育てられたことは、この状況に何か影響するか?」



「……というと?」 



「あんたは亡霊になってこの街を見守ってる、ってのがこのトーキョーの都市伝説だ。やりすぎた『強化』はあんたに憑り殺される。でもあんたは七同盟を殺った後も復讐を続けているだけだ、っていうやつもいる。『強化』を根絶やしにするまで、あんたは銃を置かないし、『強化』の頭は弾け飛び続ける。そしていまのおれは『強化』だ。あんたの目的は何なのかな、と思ってね。もし後者なら……」




 おれはクールダウンを終えた『隠密インビジブル』に発動を促す。左腕が動かないので両手を合わすことはできなかったが、動く右腕の中で静かな駆動音を感じ、姿を消すのとは違う回路への接続を促した。




「身内の情でもかけてもらえるのかと。……死ぬのは嫌なんでね!」




 亡霊の前で『隠密』を解いたのはクールタイムを稼ぐためだ。おれにとっての唯一の武器は攻防一体。しかも稼働時間が限界を迎えている様子がある。何度も放つことはできない。確実に当てるには、不意打ち以外にはないと踏んでいた。




 声と共に右腕を伸ばす。その手の先から、電流が迸る。ほとんどゼロ距離での放出。




 だが、『亡霊』は、ネクストは、やはり反応速度が尋常ではなかった。

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