第4話 インビジブル
「うちもいろいろ商売やってんだ。『
「……大丈夫なのか、その……」
おれは率直に、引っかかったことを口にした。そりゃあそうだろう。自分の身体を弄り回されて、挙句身体に入れられたものがまだ実験中だの開発中だの言われれば、不安にもなる。
「大丈夫かと言われりゃあ、何とも言えねえな。何せ『開発中』だ。どんな不具合があるかは、てめえらでテストするんだよ」
オヤジがニヤリと笑う。なるほど、それでウインウインというわけだ。確かに、いくらその人となりを気に入ろうとも、タダで『強化』の身体をくれてやる、というのは虫が良すぎる話だ。
「ただ」
オヤジが前のめりになって顔を突き出す。その瞬間、顔に張り付いていた薄ら笑いが消えた。
「性能は間違いねえ。なにせそいつの
立ってみろ、と続けたオヤジの言葉に、おれはベッドから降りる。貫頭衣は脛までの丈で、靴は履いていなかった。元々ボロボロの、ほとんど履いている意味もない靴を履いていた足は薄汚れていたはずだが、いま見える素足はおれが生まれてこの方見たことがないほど綺麗だった。その足が床を踏む。真っ白な床の冷たさを感じた。感覚は変わっていない。膝に体重が掛かり、直立する。なにひとつ、変わったところは感じない。
「問題なさそうだな」
「……おれは、おれの身体は、どう変わったんだ?」
「そらまあ、興味はあるよな」
前のめりの姿勢から戻ったオヤジが、何かを思案するように右手で顎を摩りながら言う。
「威勢のいい方とおめえに施術したのは、まったく別の武器だ。
「
「手え、出してみろ」
言われた通り、おれは手を出す。どちらの手かわからなかったので、両の手を自分の胸の前に突き出した。
「それで両手を合わせてみろ。それが発動の合図にしてある」
「手を叩けばいいのか?」
「それでいい。やってみな」
おれは言われた通り、伸ばした手をそのまま叩き合わせた。
変化は、その瞬間に、すぐさま訪れた。
おれの視界から、胸の前に伸ばしたおれの手が、腕が、消えた。
「これ……」
「おめえさんの身体に無数に装着された極小のカメラが、撮影した周りの映像を同時におめえさんの身体の表面に映し出すことで、おめえさんの姿を
隠密。つまり透明人間、てことか。
おれは何も望んでいなかった。そのはずなのに、自分が得た力を知った瞬間、確かに心が震えた。誰もにできることではない力。それを手に入れた自分に、その瞬間、確かに酔った。自分の力で手に入れたわけでもないのに。
「もう一つ、それと一緒に使える武器を仕込んである。使い方は戦闘訓練で教えてもらえ、いいな、カシワバラ!」
視線を上げると扉の向こうから半顔のワカガシラが現れ、恭しく頭を垂れた。
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