第5話 誘いと食事

ピンポーン——。


昼過ぎ、再びインターホンが鳴る。


軽く伸びをしながら玄関へ向かい扉を開けると、そこには先ほどの青年が立っていた。


「早速だけど飯でも行こうぜ?さっきのお礼に奢るよ」


彼は相変わらず軽い口調で話しかけてくる。


「え、まさかもう昼は食ったか?......いや、まあ食っててもいいけどさ。ちょっと街を散策がてら、一緒にどう?」


一瞬考えたが、食べてなかったし断る理由も特になかった。


「行くよ」


そう答えると、彼は満足そうに頷く。


「決まり!今から行く所は、いい雰囲気の店だから楽しみにしとけよ!」


俺は軽く息を吐きながら、玄関を閉めて彼とともに外へ出た。


数分ほど歩いて、俺たちはカフェに入った。


木と緑を基調としたオシャレな内装。


静かな音楽が流れ、客たちは食事を楽しんでいる。


彼はカウンターで注文を済ませると、テーブル席へと座った。


「な?悪くないだろ、このカフェ。設備も快適だし、店員の対応もスムーズだし、理想的な店って感じだよな」


俺は曖昧に頷く。


今日来たばかりのはずの彼がこの店を知っていることに、ふと疑問を覚えながら。


確かに、全てが整っており不快な要素は何もない。


彼は話を続ける。


「そういえばこの都市、仕事も自動で最適な職場選んでくれるんだろ? マジすごくね?」


俺はフォークを動かしながら、その言葉に疑問を投げかける。


「……それ、どうやって決まるんだ?」


「詳しくは知らないけど、その人のこれまでの人生とか経歴から分析してくれるらしいよ。基本的には最初の住民登録時点でほぼ決まるって話だな。」


俺は少し考えたあと、頭の奥で何かが引っかかった気がした。


そういえば仕事のためにこの都市へ来たはずなのに、なぜか肝心な事がぼんやりしている。


そもそも、俺はこの都市で何をするつもりだったんだ…?

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