第19話 兄ルイスのアンバランス。

「イザベラ様の10歳の誕生日、バーグ公爵邸では盛大なパーテイーが催されました。多くの貴族が呼ばれました。しかし、パーティーの場にイザベラ様は現れませんでした。気分じゃなくなったそうで、どこにいたのかも分かりません。今まで積もり積もったものもあり、イザベラ様は周囲に見限られた決定的な出来事となりました」


カルロスが言いづらそうに告白してくる出来事は、私にとって貴重な情報だ。

私はイザベラであって、イザベラではなくイザベラとしてこれから生きるものとして是非聞きたい情報である。


「誕生日会に主役がいないという状況があったいうことですね。私は兄ルイスの婚約者フローラ様にお会いしたいのですが、それも無理な状況なのでしょうか?」


公爵令嬢であるという兄ルイスのフローラは間違いなく重要人物だ。


「フローラ様は未来の王妃になるからには貴族令嬢の監督責任があると考える真面目な方です。周りの貴族令嬢にも厳しく接していますが、面倒見が良いからか人望もあります。イザベラ様が周囲から無視されはじめても、根気よく関わっておられました。やはりお茶会に突然捨て猫を連れてこられたり、大遅刻されたイザベラ様に退屈な会をしているのだから顔を出して貰えるだけありがたく思えと言われたのが大きかったのか今はイザベラ様と距離をとっております」


病気を持ってそうな捨て猫に触れるメンタルが私にはない。

私が身分差別的発言をした時、兄ルイスが私を非難してきたのは捨て猫も差別せず場違いな場面にも連れてくる本物のイザベラと比べたからだろう。


でも、それはフローラ様の立場で考えれば想定外である上に食べ物を扱っているお茶会に捨て猫を連れて来られるのは不衛生で非常識な困ることだ。


向けるべきはイザベラの非常識さだと私は思う。


「イザベラのしていることは私が39年間生きていた中でも、一度もしてこなかった信じられない自己中心的な言動と行動です。ルイ王子はそれについて何も言ってこなかったのですか? 」


イザベラの婚約者であるルイ王子はとても賢い子だ。

今12歳でしかないはずなのに、心は39歳の私が会いたくて震える素敵な子だ。


「バーグ公爵夫妻待望の1人娘として生まれ、可愛がられすぎて我儘になったのは環境のせいで彼女のせいではないとおっしゃっていました。ルイ王子はイザベラ様が自然体で過ごせるよう、傷つかないようにできることは何でもするそうです。ルイ王子がイザベラ様の問題行動を咎めたことは一度もありません。むしろ、問題行動により周りから除け者にされたイザベラ様に対してさらに過保護に接しているように見えました」


確かにダメ女に失望するどころか、ダメ女を助長する行動をするところがあるのを1ヶ月ちょいの付き合いでルイ王子から感じとっていた。

まるで庶民のように奔放な行動をとるイザベラは、小説のメインヒロインのようだ。


公爵令嬢という身分は悪役令嬢相当でヒロインには高すぎるが、周りから無視されていることで身分も関係ないヒロインっぽい可哀想な子に仕上がっている。


可哀想な可愛い子に燃え上がるヒーローにルイ王子にはなって欲しくない。


「ダメ女製造マシンですね、ルイ王子は。実は私はこの世界を小説の世界だと思っています。私がそんな風に考えるのは私が自分のいた世界で、自分は常に主人公を引き立てる脇役だと思ってきたからです。私は自分では必死にコツコツ生きているつもりでした。私が主人公だと思っている友人は失敗しても逆に失敗してよかったような行き先に辿り着きます。気分で周りを振り回しても、周りは苦しみますが自分だけは幸せになります。私は39年脇役として生きていたから、この世界にきても誰が主役か常に考えていました。正統派で優秀なルイ王子がヒーローだと思いましたが、私は兄ルイスが怪しいと思っています。彼は変だと思いませんか? 見た目はお色気たっぷりで遊んでそうなのに、明らかに同年代に声もかけられない内気な男の子です。そのような彼に30人を集めるように言ったら、12人の家庭教師のシニアばかり集めてきました。年齢層関係なく集めろと追加注文出したら、必死にまたベテラン貴族を集めてきます。結婚適齢期を集めてほしいという私の願望もわかっていて、声をかける相手がいなく必死に集めたのでしょう。彼はとても真面目な子です。それなのに口調も粗雑で王族のものとは思えません。彼ほどアンバランスな存在は見たことがありません。この世界が物語だとしたら兄ルイスは物語の行方を左右する重要人物で、本人の性格や意思を無視した行動を物語を進める強制力によってしているのではないかと考えだしました。本来内弁慶で友人もいなく真面目な彼は、真面目な婚約者フローラ様とは相性は悪くないはずです。むしろ真面目な人間が嫌悪しそうな我儘で弟の婚約者イザベラを好きになるのは変ではないですか?」


私が一気にこの世界の感想を述べると、カルロスはゆっくりと頷いた。



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