ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち

第1話目覚め

 世界各地に突如としてダンジョンが現れたのは10年前の事だった。


 そして謎の迷宮に足を踏み入れれば、人類はスキルと言う新たな力に目覚めることが出来る。


 僕、綿貫 鐘太郎 (ワタヌキ カネタロウ)も例にもれずに、おかしな力を授かったわけだ。


 不安はあったがまぁ、全校一斉にダンジョン近くで適性を調べつつ目覚めちゃうのだから、予防接種程度のお手軽感である。


 その結果、僕はダンジョンに潜る資格を取るための学校に入学することになったのだから文句もなかった。


 それにダンジョンは人知の及ばない不思議な場所なのだという。


 ならばどんな不思議な現象が起こっても、何らおかしなことはないのだろう。




 ダンジョンに踏み入ったその日の夜。僕は夢を見た。


『ハロー私は君が目覚めた権能だよ?』


「は? 何言ってんの? 馬鹿なの? 」


『当たりが強くないかな!? 心当たりあるだろ? 私は君が……ダンジョンで授かった。なんとなく気がついているんじゃないか?』


「ああ……なるほど。まぁそう言うこともあるよね」


『……軽いなぁ。ちょっとは疑ってもいいんだよ?』


「疑わないよ。まぁ確かにそうかなって感じするし」


『やっぱり自覚あったんじゃないか』


 そりゃあったけど、正直かなり胡散臭い。スキル判定にも引っかからなかったし。


 ちなみに僕のジョブ適性は僧侶と戦士。目覚めたスキルは筋力強化だったはずだ。


 そう、かなり胡散臭いとは思ったが……それでも信じたのは、単におかしなことに適応したいと思っただけのことだった。


「権能が何なのかは知らないけど、とりあえずスキルがしゃべるなんて聞いたこともないから。でも僕はこれからダンジョンなんて訳の分からないところに潜らなきゃいけないんだから、多少の不思議は飲み込むよ」


『…………なるほどね。まぁそうだよね。訳が分からないか』


 何かに納得している誰かはしかし妙な事を口にした。


『ならば私は最適だ。なにせ私はダンジョンの手引書みたいなものだからね』


「手引書って……そもそも君は何が出来るスキルなの?」


『スキルじゃないよ、権能だ。君はとある存在の知識を得る権利を得た』


「……つまり?」


『アドバイスが出来る』


「……へー」


『……なんだか馬鹿にされている気がするなぁ。ただのアドバイスじゃないからね? すごく役立つアドバイスだから。なにしろ私の名前は……、まぁいいか。呼び方は君が決めてくれ、何せ私は君の権能なんだからね』


「じゃぁ……攻略君で」


『雑過ぎやしないかな!?』


「わかりやすさが一番だよ」


 声は驚愕していたが、アドバイスをくれると言うしピッタリだと思う。


 まぁ、何かのおかしな夢だろうなって僕はそう思った。


 驚きだが、夢じゃなかったけど。

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