第8話:イケメンDr.
問診票を書き終えると、朝霧先生に車椅子を押され、診察室の前にで呼ばれるまで少しの間待つことになった。
その間に、私はこれまでの出来事を整理する。
【これまでの出来事】
・私は気づいたら知らない場所に立っていて、突然ガラの悪いイケメン高校生、黒崎くんとぶつかる。
・足を捻挫し、知らん学校の保健室に連れてこられる。
・応急処置を受けていると校長から新任の英語の先生認定される。
・私が状況を飲み込めずにいると、記憶喪失扱いされ、一日休みをもらう。
・異常なほどのエスコートを受けながら、病院に到着。
・付き添ってくれた朝霧先生は、この世界で私が住んでるマンションのお向かいさんであることが判明。
ダメだ……。意味わからん過ぎて整理できん……。
私が頭を抱えていると、朝霧先生が心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫ですか? どこか具合でも……?」
その顔が近くて、私は思わずのけぞった。
「いえ、大丈夫です」
ここの世界の人は、なぜか異常にパーソナルスペースが狭い。私はその距離感に心臓が落ち着かない。
「そうですか? 具合が悪かったら遠慮なくおっしゃってくださいね」
その表情は、本気で心配したようだった。
なんで今日会ったどこの馬の骨かもわからん私に、そこまで親身になってくれるのだろうか?
しかも、記憶喪失ってことになってて、不審度MAXなのに……。
そんなことを思っていると、診察室のドアが開いた。
「藤野ヒナタさん、どうぞ」
看護師さんの声に促され、朝霧先生が車椅子を押して診察室へと入っていく。診察室には、白衣を着た男性医師が座っていた。
一応付け加えると、イケメンである。
「初めまして、水野です。今日はどうされましたか?」
思っていたより全然若い。二代目だろうか?
私がそんなどうでもいいことを思っていると朝霧先生が説明し始めた。
「今朝、生徒とぶつかって捻挫してしまったようなんです。少し酷いようなんですが……」
朝霧先生は養護教諭らしく、簡潔に説明している。
「そうですか。少し診てみましょう。こちらの診察台に移れますか?」
そう言うと、横に置かれている診察台に促される。
私が立ち上がると、朝霧先生は当たり前のように身体を支えてくれる。
診察台に横になると、水野先生はそっと私の足に触れる。
「……ッ……」
朝霧先生に触れられた時と同様、私が痛がると水野先生は言った。
「なるほど。かなり酷いようですね。一応レントゲンも撮ってみますか。放射線の方に行ってもらっていいですか?」
私は放射線の方に回された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます