第7話
「これは……まさか、聖女の力が……!?」
ユリウスが、驚愕の声を上げる。
「わたくしは、もう、何も失いたくない! セレスティアも、この国も、レオン様も……!」
レイラの歌声が、地下施設に響き渡る。
その歌声は、かつて人々の心を癒し、病を治した聖女の歌声だった。
「そんな馬鹿な! 聖女の力は、もう失われたはず!」
ユリウスが、叫ぶ。
その歌声は、魔物たちを鎮め、魔法陣を破壊していく。
そして、セレスティアの傷も、癒されていく。
「レイラ様……」
セレスティアが、目を開けた。その顔には、驚きと感動が入り混じっていた。
「セレスティア! よかった……!」
レイラが、セレスティアを抱きしめる。
「くそっ、なぜだ!?」
ユリウスが、悔しそうに叫ぶ。
「ユリウス兄様。わたくしは、もう、あなた様を許しません」
レイラは、静かにユリウスを見つめた。その瞳には、もう悲しみはなかった。
「貴様……!」
ユリウスが、魔導具を構える。だが、その時、人影が地下施設に飛び込んできた。
「レイラ様! 無事か!?」
それは、ユリウスの護衛騎士を蹴散らし、レイラたちの元へと駆け寄った。
「レオン様!」
レイラが、その姿を見て、安堵の表情を浮かべる。
「お前は、誰だ!?」
ユリウスが、俺を睨みつける。
「俺は、レイラ様の婚約者、レオンだ。そして、お前のようなクズは、この俺がぶっ潰す!」
俺は、ユリウスに突進した。
「馬鹿な! この私が、こんな筋肉馬鹿に……!」
ユリウスは、俺の拳を受け止めきれず、吹き飛ばされた。
「ユリウス兄様!」
アリオスが、ユリウスに駆け寄る。
「アリオス、貴様もだ!」
俺は、アリオスにも拳を叩き込んだ。アリオスも、ユリウスと同じように吹き飛ばされた。
「くそっ……!」
ユリウスとアリオスは、痛みに呻きながら、俺を睨みつける。
「これで、終わりだ」
俺がそう言うと、王宮騎士団が地下施設に突入してきた。レオナルドが、その先頭に立っている。
「第一王子、ユリウス! 貴方の悪行は、全て露見した! 観念しろ!」
レオナルドが、ユリウスに剣を突きつける。
「レオナルド……貴様、裏切ったのか!」
ユリウスが、悔しそうに叫ぶ。
「わたくしは、レイラ様にお仕えする騎士。あなた様のような悪逆非道な者に、忠誠を誓うことはできません!」
レオナルドの言葉に、ユリウスは絶望の表情を浮かべた。
そして、第一王子の悪行は暴かれ、彼は捕らえられた。
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数日後、公爵邸の庭園で、俺はレイラと二人でいた。
「レオン様、本当にありがとうございました。あなた様がいなければ、わたくしは……」
レイラが、俺の手を握り、感謝の言葉を述べる。その瞳は、もう悲しみではなく、温かい光に満ちていた。
「気にするな。俺は、レイラ様を信じていたからな」
「レオン様……」
レイラが、俺に寄り添う。その体温が、俺の心に安らぎを与える。
「これで、俺の理想のスローライフが送れるな」
俺がそう言うと、レイラはくすりと笑った。
「ふふ、そうですね。ですが、レオン様。あなた様は、もうただのモブ貴族ではございませんわ」
「え?」
「王宮では、あなた様を『聖女の守護者』と呼んでおりますわ。そして、近衛騎士団への入隊も、強く望まれております」
レイラの言葉に、俺は頭を抱えた。
「マジかよ……。俺の気ままな生活が……」
「あら、嫌でしたか?」
レイラが、俺の顔を覗き込む。
「いや、まさか。レイラ様のためなら、喜んで!」
俺は、笑顔で答えた。レイラも、嬉しそうに微笑んだ。
その時、庭園の入り口から、賑やかな声が聞こえてきた。
「レイラ様! レオン様! ご無事でしたか!」
そこにいたのは、ゼノス、セレスティア、アルフレッド、エラスムス、そしてリナだった。リナは、なぜか冒険者ギルドの仲間たちを大勢連れてきている。
「みんな……」
レイラが、嬉しそうに彼らを見つめる。
「レイラ様、あなた様の歌声は、本当に素晴らしかったです! わたくし、感動して涙が止まりませんでした!」
リナが、興奮したようにレイラに駆け寄る。
「ありがとう、リナ」
「レイラ様、あなた様の聖女の力が戻ったと聞いて、皆、大変喜んでおります」
レオナルドが、深々と頭を下げる。彼の隣には、元聖女騎士団の仲間たちが並んでいる。
「レオナルド隊長、皆様……」
レイラが、感極まったように言葉を詰まらせる。
「これからは、レイラ様と共に、この国の未来を築いていきましょう!」
レオナルドの言葉に、全員が力強く頷いた。
俺の周りには、いつの間にかたくさんの仲間たちが集まっていた。彼らと共に、俺の新たな人生が始まる。
「レオン様、これからも、どうぞよろしくお願いいたしますわ」
レイラが、俺の手を握り、微笑んだ。
「ああ、もちろんだ。レイラ様」
俺は、レイラの瞳を見つめ、心の中で誓った。この世界で、俺はレイラ様を守り、共に生きていく。
筋肉モブ貴族、最強ラスボス公爵令嬢に溺愛されて世界を救う!?〜悪女の真実と、俺の理想のスローライフはどこいった?〜 境界セン @boundary_line
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