第3話 新生—デアイケイ

 『幽霊屋敷』に囚われたカイトたちはシャドと名乗る謎の存在にこの屋敷に存在する<>について説明をされる。しかしその内容は不可解なものでその正体に関して殆ど理解できなかった。


「つまりよぉ、その<>とか言うのを見つけてどうにかすればここから出られるのか?」

カイトは和室に座り込み腕を組んで考える。いつ後ろの襖から忍者が出てきてもおかしくないこの極限状態においてもカイトは持ち前の図太さでどっしり落ち着いている。

「それはどうかな、シャド曰く<>と関わろうとした人間は居たようだけど彼らは<>を裏切ってその後どうなったかは一切説明が無かった。もしかしたら…」

ネロはテーブルの上の湯飲みとCCレモンのペットボトルを交互に見ながら答えた。

「やめて!ネロまで変なこと言わないでよ!<>にお願いしてここから出してもらえばいいじゃん!だってウチらは何もしてないのに勝手に中に吸い寄せられて閉じ込められたただの被害者なんだから!」

ミサはそう言うと背負っているランドセルの右側の肩ひもを両手で強く握りしめた。

「どうであれ”<>を見つける”か”別の出口を見つける”。今のところ俺たちに出来ることはそれくらいしかない。この部屋以外の場所も探してみよう。」

ネロはそう結論を出すとカイトとミサを促し、『幽霊屋敷』の探索を再開した。


 先ほどまでいた和室を抜けるとリビングとダイニングとキッチンが一体になった部屋へたどり着いた。家具や衣類に書類などが置きっぱなしになっており生活感を感じさせるがよく見れば鍋やフライパンのり。どう見てもただの電子レンジなのに側面にマジックで「」と書かれていたりするなどこの世ならざる光景が広がっており、三人はまるで未知の世界を航海している気分になった。


 しばらく室内を物色していると急にリビングに置かれているノートパソコンが起動した。ノートパソコンのOSは10年以上も昔の古いものだったがネロは問題なく操作することが出来た。しかし、インターネットに接続することはできなかった。PC内のデータから手がかりを探りはじめたネロは保存されているメッセージ履歴を見て顔をしかめた。

(酷いなこれは)

カイトはともかくミサが見るとショックを受けかねないのでネロはメッセージが表示されないようにした。


 ネロがしばらくノートPCを操作しているとインターネットには接続していないはずなのに「ピョコ!」というSEが鳴り響きがメッセージを受信したことを知らせた。そこにはこう書かれていた。

<新着メッセージ>

タケ:おいーす

タケ:もしかして俺のガチ恋?

タケ:ガチ恋JS?

タケ:ガンヅキしたい


 ネロはこのメッセージを見て絶句した。こんなおぞましい存在が自分に向けてメッセージを発信していると思うと吐き気がしてきた。しかし現状手がかりはこれしかない、このヤバい男から情報を引き出して<>か『幽霊屋敷』の真相に辿り付かなければならない。ネロは意を決してハウス食品の商品「ザ・ホテル・カレー」でトランプタワーを作ろうとしているカイトとミサを近くへ呼んだ。


「なんだこいつ!?」

「キモ…キッッッッショ!死ねよ!」

カイトとミサは送られてきたメッセージを見て率直なリアクションを表していた。

「気持ちはわかるけど今のところコイツだけがメッセージのやり取りが出来る存在のようだ。」

ネロは冷静に真実を告げた。

「そして俺たちはこのタケというユーザーから情報を得る必要がある。」

ネロはキーボードを叩きタケへのメッセージを打ち込んでいる。

カタカタカタ……ターン!

小気味良い最後のエンターキーの音と共に、ネロが静かに告げた。

「――できたぞ」


タケ:ガチ恋JS?

タケ:ガンヅキしたい

<新着メッセージ>

ケイスケ:質問いいですか?

<タケにブロックされました>


 三人に沈黙が流れる。

「すまない…まさか一発でブロックされるとは…」

ネロは眼鏡を抑えながら項垂れている。

「なぁ?これ、アカウントは新しく作れないのか?」

腕を組みながらカイトはネロに尋ねた

「どうだろう…普通に考えたら無理そうだが…」

そう言いながらネロは高速でPCを操作する。

カタカタカタ……ターン!

小気味良い最後のエンターキーの音と共に、ネロが静かに告げた。

「――なんかできたわ」


 こうして出来上がった新しいアカウントは「りっ」(ミサ命名)と名付けられタケに再びコンタクトを開始した。


<新着メッセージ>

りっ:こんにちは

タケ:うーす

タケ:ガチ恋JK?

りっ:私はあなたのファンです

タケ:ガチ恋ファン?

りっ:それはまだわからないけど私はあなたのファンです。

<タケにブロックされました>


「なんでよ!?」

ミサは台を叩きながら叫んだ。

「なんとなく思ったんだが、これ全部ハイって答えないとブロックされるんじゃね?」

カイトは鼻をほじりながら言った。

「は?んなわけ…」

ミサが反論しかけたがそれをネロが手で制しながら言った。

「試してみる価値はある。カイト、やれるか?」

「ちょっとやってみるか」

試すだけ試そう。そんな気分でカイトはネロに新しいアカウントを用意してもらうことにした。


カタカタカタ……ターン!

小気味良い最後のエンターキーの音と共に、ネロが静かに告げた。

「――できたぞ」


 新たに作ったアカウント「aya」を操りカイトは『タケ』に挑む。


<新着メッセージ>

aya:どうも~!タケさんのガチ恋リスナーでーす!

タケ:ガチ恋リスナー?

aya:はい

タケ:ガンヅキしたい

aya:はい

タケ:スカートにかけたい

aya:はい

タケ:オラに会いたい?

aya:はい

タケ:オラに会ってデートしたい?

aya:はい

タケ:ホテルは?

aya:はい

タケ:あやちゃんは天使だよ

aya:はい

タケ:こっちに来る?

aya:はい

タケ:迎えに行くね

aya:はい


 カイトが最後のメッセージを送信した途端、部屋がグラグラと揺れて今まで開かなかった奥の扉が独りでに開いた。そして「アヘェ!オホォ!フヒィ!フシィ!」という声が今しがた開いた扉の向こうから聞こえてきた。三人は顔を見合わせ力強く頷いた。

ついに『タケ精子スプリンクラー』と対峙する時が来たのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る