独白
宵ヲ出ズ
第1話 見知らぬ目覚め
「あれ、ここは」
目が覚めて周りを見渡した。
なんの変哲もない質素な部屋。
「起きた?」
辺りを見渡すと1人の女性が覗き込んできた
「おはよう美月」
にこやかに挨拶を返す自分
(今のは?)
勝手に口が開き
目の前にいる女性の名前が出てくる
(なんだ今のは)
「今日は後輩さん達を呼んでのご飯会でしょ?
結婚式するっていう報告会するのに…
ほら、ぼーっとしてないで準備準備!」
いきなりの事で頭が追いつかない…
ご飯会?結婚?何を言ってるんだ
この美月……さんは。
そもそも自分は誰なんだ?何か覚えてることはないか?
目を覚ましたら知らない部屋。
親しげに話しかけてくる女性。
…………どうすればいいんだ
頭の中で記憶を辿ろうとしている。
【────────コロス】
………今のはなんだ?
少しずつ明確になってきたであろう記憶の最後
………ころす?誰を?
この記憶の持ち主であったであろう俺は誰かに恨みを抱いていたのか?
記憶を曖昧にしてまでの殺意を俺が…?
俺………は………
俺は…慎也……
そうだ俺は久賀慎也………
一般的な会社員で社内で一目惚れをした彼女
……美月…さん……
三島美月と……結婚する。
結婚式をする前に会社の後輩たちを呼んだ
報告会も兼ねて
そうだ… 僕が呼んだんだった……
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ピンポーン
「あっ!きたきた〜」
チャイムがなってスリッパをパタパタさせながら客人を迎えにいく美月は本当に可愛らしい
本当にこの人が僕の奥さんになってくれるのか
「ほら!慎也さん〜
後輩さん達きたよ!」
お邪魔します〜
僕がよく面倒を見てる後輩たちがぞろぞろ入ってくる
ふと…目を引かれた
あいつ……
【─────タイ─────】
うっ!まただ………
この頭に響く感じ……
前からこうだったっけ……?
「先輩!ばんわっす〜
今日はお呼ばれしちゃいまして!
お邪魔しますね!」
すごく元気のいいコイツは……
田井 晴翔……
名前を思い出しただけか………?
それにしてはやけに脳裏に響いたが……
「先輩?」
「もうちょっと慎也さん!しっかりしなよ〜
ちょっと元気ない?…体調大丈夫?」
「あっ、ああ……大丈夫だよ美月。
タイ…もごめんな。ようこそいらっしゃい」
「本当に!せっかく晴翔君が来てくれたのに!」
「なんか先輩らしくないっすね〜
本当に今日お邪魔して大丈夫ですか?」
「本当に大丈夫だよ。
むしろようこそ。歓迎するよ」
「んじゃあお言葉に甘えまして、
お邪魔します!
あ!手土産も持ってきました!
三島さんにオススメしてたやつ!
…あれ?もう久賀さんでしたっけ?」
「入籍はしたからもう久賀だね!
ややこしくなるから美月でいいってば」
「いや〜流石に会社のアイドルを名前呼びは
鬼先輩に嫉妬されちゃいますって!」
「誰が鬼先輩だ」
本当にこの後輩のコミュニケーション能力には驚かされる……
名は体を表すってのはこういうやつのことをいうんだろうな………
周りを明るく照らして翔けていく……
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ドンドンドンドンッ
家でゆっくり過ごしていたある日
突然玄関のドアから響きわたる音で起こされる
美月は………
そうだ出かけてたっけ……
「……なんだこんな時間に……….」
とは言ったものの体感でしかなく
時間を確認しようとスマホに手を伸ばす
……ない?
スマホが行方不明だ……
「………先輩!!」
聞き馴染みのあった声がした
……タイの声か……?
ソファから起き上がった時に固いものを踏んだ
「あっ……こんなところに」
スマホの充電は切れていた
そういえば動画を見てて寝落ちしたっけ
「…久賀先輩っ…!!!」
そうだ…タイ…!
急いで玄関に向かい鍵を開けた瞬間
勢いよく開いた
「久賀先輩っ………!!!
み、美月さんが………!!!!!!」
…………………………は?
「美月…がっ……美月さんがっ
殺されました………!」
第1話 終
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